高齢者の事故の実に77%が、家のなかで起きています。
段差でつまずいたり、階段から転落するといった事故が絶えません。
「どうすれば住み慣れた我が家で最期まで暮らせるのか」、との不安の声を耳にします。
そんなシニア世代のために、国が支援に乗り出しました。
国土交通省は2019年、「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」を公表。
自宅(戸建て)を改修することを推奨しています。
例えばヒートショック防止等をめざす「温熱環境」など、8つの重要な改修ポイントを挙げた点が見どころです。(→「ヒートショック」とは)
今号はこの〝改修ガイドライン〟を紹介した連載記事を“総ざらい”いたします。
〝高齢期の住まいの改修ガイドライン〟国交省が公表
【目次】
第1回「いつまでも外出できますか?」
第2回「住宅内の温度差を整え、ヒートショックを防ごう!」
第3回「家のなかの生活空間はコンパクトに!」
第1回「いつまでも外出できますか?」
社会から孤立すると、死亡率がなんと2倍超へ
外に出ることがおっくうになると、買い物に行かなくなったり、人と会う機会が少なくなるなど、孤立しがちになります。
孤立し閉じこもっている高齢者はそうでない人より、死亡率がなんと2倍を超えると発表されました(2018年、東京都健康長寿医療センター研究所)。
玄関から道路に出るまでのわずかな距離でも段差があると、将来足腰が弱ったとき「外に出たくないな」と自宅に引きこもってしまいます。
もし玄関まわりに段差があれば、今のうちに解消しておきましょう。
外へ出かければ、笑顔も増える!
社会とつながる〝玄関〟にしたい
改修のポイント(改修の方法は一例です)
➊玄関から道路(外)まで安心して歩けるように―
⑴玄関のアプローチはスロープをつくり、段差を解消する
⑵玄関に手すりや照明を設置する
⑶玄関の扉は、開けやすい「引き戸」に交換する
➋外出や来訪がしやすいよう玄関内は―
⑴下駄箱の大きさや配置を見直し、玄関のスペース(土間)を広くする
⑵玄関内に収納スペースを設ける(外出用のつえ、キャリーカート等を収納)
⑶手すり(縦タイプ)や小さなベンチ(腰かけ)を設置する
➌玄関の改修が難しい場合は、縁側等からバリアフリーの経路を確保できるよう、縁側等にデッキやスロープ、手すりを設置する(→「バリアフリー」とは?|おとなの住む旅 用語解説)
改修すれば、こんな効果が期待できます!
○家族や友人、地域の人たちとの交流が増え、日々の生活が充実します
○運動機能や意欲が衰えるのを防ぎ、健康で自立した老後が過ごせます
○身体が弱くなっても外出できます
〝高齢期の住まいの改修ガイドライン〟国交省が公表 「住み慣れた町(今の自宅)で、最期まで暮らせますか」 老後の生活相談で、多くの方々から聞かれる切実な声です。 そんなシニア世代のために、国が支援に乗り出しました。 国土交通省は昨年、「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイ...
第2回「住宅内の温度差を整え、ヒートショックを防ごう!」
入浴中に亡くなられた野村 克也さん
2020年2月、プロ野球元監督の野村 克也さん(享年84)が入浴中にお亡くなりになりましたが、ヒートショックが原因だったのではないか、との医療関係者のコメントが注目されました。
「ヒートショック」とは急激な温度変化が身体に与える衝撃・ショックのことです。
ヒートショックによる事故は「温熱環境」(暑くも寒くもない〝快適な〟温湿度の環境)が整っていない家の中で起きやすくなります。
厳しい寒さが続き、夜はしっかり湯船に浸かって体を温める人も増えてきたのではないでしょうか。湯船に浸かるのは体にいいことではありますが、この時期気をつけたいのがヒートショック。特にシニア世代は要注意です。そこで今回はシニア世代にも気をつけてほしいヒートショックについてご紹介します。 ヒートショッ...
家の寒さがヒートショックの原因に
入浴中の事故のリスクを高めます!
改修のポイント
❶窓などの開口部は断熱性を高めることが大切。暖冷房設備も適切に設置しましょう
❷部屋と廊下、トイレ、浴室などの温度差を減らしましょう
❸住まい全体の暖冷房ができるよう、間取りを工夫しましょう
改修方法の一例
○部屋と廊下、トイレ、浴室の窓などを(内窓や高断熱サッシ等により)断熱化する
○廊下、トイレ、浴室などにも暖冷房設備を設置する
○部屋の暖冷房が廊下、トイレ、浴室にも届くような間取りにする
○外壁、屋根、天井、床を断熱化する
○タイル張りの浴室はユニットバスに換える
改修すれば、こんな効果が期待できます!
⑴いつまでも健康で自立した生活ができます
⑵ヒートショックや熱中症などを予防します
⑶断熱性が高まると、光熱費が安くなります
〝高齢期の住まいの改修ガイドライン〟国交省が公表 高齢者には自宅が住みやすいとは限りません。段差があったり、築年数が経過して修繕も増えたり‥。 どうすれば住み慣れた我が家で最期まで暮らせるのか、といった不安の声を耳にします。 そんなシニア世代のために、国が支援に乗り出しました。 国土...
第3回「家のなかの生活空間はコンパクトに!」
コンパクトで行き来しやすい住まいにしませんか?
寝室やリビングなどを1階のワンフロアにまとめてコンパクトにしたり、居室を広くすれば、暮らしが安心・快適・便利になります。
階段がつらくなったり、足腰が弱くなったときも、寝室などの生活空間が1階にあれば安心です。
移動を減らせば家の中でケガをするリスクも減るほか、万が一車いすの生活になっても快適に過ごせるでしょう。
〝1階生活〟のススメ~足腰の衰えに備えましょう
改修のポイント
➊日ごろの生活空間を同じ階(フロア)にする
➋よく利用するスペースでは間仕切り等を少なくし、広々と利用する
改修方法の一例
■玄関・トイレ・浴室・リビング・キッチンと同じ階にある部屋は、寝室として利用する
<例えば、トイレに近い和室や応接室などは寝室(洋室)に変更する>
■ドアの引き戸への交換、間仕切り壁の撤去、家具の配置がえなどを行い、生活空間を一体的にまとめる
<例えば、居間とダイニングを隔てる間仕切り壁は撤去する>
■掃除のしやすい床仕上げにする
改修すれば、こんな効果が期待できます!
⑴開放的で快適な生活ができます
⑵運動機能を保ちながら、いつまでも健康に暮らせます
⑶心身が衰えても、自宅で住み続けられます
〝高齢期の住まいの改修ガイドライン〟国交省が公表 高齢者の事故の実に77%が、家のなかで起きています。 段差でつまずいたり、階段から転落するといった事故が今も絶えません。 「どうすれば住み慣れた我が家で最期まで暮らせるのか」、と不安の声を耳にします。 そんなシニア世代のために...
本記事の出典(間取りのイラスト2点含む):「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」はこちら
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