この4月末にリリースされた「生誕100年 瀬戸内寂聴物語」が評判を呼んでいます。
作家で僧侶の瀬戸内寂聴さん(1922~2021年)の99年の生涯と文学作品の魅力を紹介する評伝です。
寂聴さんを慕っていた作家の太田治子さんでさえ、「今まで知らなかった話ばかり」と驚くあたりが評判の理由の一つでしょう。
寂聴さんの生き様に憧れるシニア女性も多いだけに、今おすすめしたい一冊です。
まさに「巨星落つ」という言葉が最もふさわしいでしょう。 昨年11月、作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんが99歳で永眠されました。ご冥福を心よりお祈りします。 そして、半年が過ぎた今月中旬、お元気な頃の作家・林真理子さんとの対談等を収録した寂聴先生最後の著書『99年、ありのままに生きて』がリリース...
寂聴さんの生き様に憧れるシニア女性たち
今回の新刊本は徳島新聞社が2023年4月29日に発刊したもの。
徳島市出身の寂聴さんに密着した同社の番記者・柏木康浩さんが執筆していますので、素顔の寂聴さんの表情まで感じられるところが見どころです。
本書は、一昨年に100歳まであと半年余りで亡くなった寂聴さんの波乱に満ちた人生をたどっていますが、法話などで語った名言や文学作品中の名文を数多く引用しているあたりも大きな魅力の一つです。
では、本書の一部を紹介します。
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幼い娘と夫を捨てて出奔した若き日の思い
若き日に、幼い娘と夫を捨てて出奔した寂聴さん。その背景には、どんな思いがあったのでしょうか。
恋や不倫を重ねながらも人気作家として文壇での地位を確立した51歳の時、なぜ突然出家という道を選んだのでしょうか。
その理由を詳しく追います。
出家後は、僧侶として京都の寂庵に拠点を構え、法話や社会活動を通じて、人々の心に寄り添い続けました。
湾岸戦争時には、断食をして反戦や平和を訴えました。
東日本大震災が起こった時には、いち早く被災地に駆け付け、被災者を励ましました。
亡くなる直前まで、現役の作家を続けたのは、小説を書くという煩悩だけは捨て去ることができなかったからだと、本人も述懐しています。
代表作「夏の終り」「場所」や仏教三部作から、源氏物語の現代語訳まで、作家としての業績も分かりやすく紹介しました。
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苦しくても愛さずにはいられない
【以下、文学作品より引用】
〈私の恋や情事の数は世間が勝手に想像し噂しているほどに多くはない〉
「東京へは行けないんです。許してください。他の人を愛してしまいました」
〈今でも、私が彼の無垢の人生の出発点で彼の運命を狂わせてしまったと信じこんでいる。凉太への理不尽な情熱のため私は安穏な家庭を自ら破壊した〉
〈新しい情事の相手は、これまでのどの男よりも強引でしたたかであった。妻子を溺愛しながら、常に複数の情事を重ねていた〉
「私は小説家になるために、家も子供も捨ててきたから…うしろめたさが今も抜けない」
〈七十年、小説一筋に生き通したわがいのちを、今更ながら、つくづくいとしいと思う。あの世から生れ変っても、私はまた小説家でありたい。それも女の〉
〈人がこの世に生まれるのは、愛するためです。愛すれば、苦しみが生まれます。でも、愛さずにはいられない。永遠から見れば、ほんの瞬きするような短い今生でも、愛する人にめぐり逢えた喜びに、まさるものはありません〉
【書籍データ】
⑴書名:「生誕100年 瀬戸内寂聴物語」
⑵体裁:B6判、224ページ
⑶定価:1430円(税込)
❑詳細はこちら
この記事と画像の出典:徳島新聞社 公式サイト・公式Facebook
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