第5回「家族と同居していますか」
4ヵ国の高齢者2800人との面談(国際比較調査)で分かったことは?
「日本と外国では、高齢者の生活意識はどのくらい違うんだろう」。
そんな問題意識を持って、国が長年にわたり調査しています。
内閣府が1980年から5年ごとに実施している「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(全8回)です。
最近(2015年度)では日本とアメリカ、ドイツ、スウェーデンの4ヵ国を対象とし、60歳以上の男女2800人(施設入所者除く)に個別面談でさまざまな問題について聴いています。
本連載記事の第5回は、日本と欧米の〝家族観〟の違いについて見てまいりましょう。
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日本と欧米は〝家族観〟がこんなに違った!
A.あなたは結婚していますか
離婚率の低い日本の高齢世代、7割が夫婦で暮らす
「現在、結婚していますか」と尋ねました。
4ヵ国とも一番多かったのは「現在、配偶者あるいはパートナーと同居している」(日本69.6%、アメリカ46.6%、ドイツ50.2%、スウェーデン51.1%)という回答です。
このように欧米3ヵ国では、夫や妻と一緒に暮らしているのは2人に1人しかいません。
これに対し、日本では7割の人たちが夫婦で生活しています。この違いは何でしょうか?
さらに見ていくと、この3ヵ国は「配偶者・パートナーとは別居または離婚した」(アメリカ18.9%、ドイツ13.5%、スウェーデン22.8%)人たちが多いのです。
一方の日本は別居や離婚が5.5%で、他の3ヵ国より極めて少ないと言えます。
もっとも、日本の現在の高齢世代(主に戦前生まれ)は離婚率が低いですが、今の現役世代が高齢期を迎えたとき、離婚率は欧米3ヵ国とさほど変わらないのではないでしょうか。
B.子供はいらっしゃいますか
日本は〝子供と同居〟が4割以上と突出
「子供はいますか」と聞きました。
4ヵ国とも「(別居している)子供がいる」(日本49.9%、アメリカ70.9%、ドイツ76.7%、スウェーデン84.3%)という答えが最も多かったです。
このようにアメリカとドイツでは7 割以上、スウェーデンは8 割以上が子供と別居しています。
これに対し、日本では〝別居〟が5割にとどまる一方、「(同居や別居している複数の)子供がいる」(27.1%)と「(同居している)子供がいる」(14.8%)人たちの割合が高かったのです。
この2つを合わせると、日本は〝子供と同居している〟が4割を上回り、他の3ヵ国より格段に多いことが分かります。
C.家族と同居していますか
〝一人暮らし〟は日本が圧倒的に少ない
「家族と同居していますか」と尋ねました。
日本とアメリカ、スウェーデンは「夫婦二人世帯」(日本36.5%、アメリカ38.3%、ドイツ47.7%)が最も多いという結果でした。
スウェーデンでは「単身世帯」(47.9%)と「夫婦二人世帯」(47.4%)が同じくらいです。
一方、「子供(配偶者含む)と同居」は日本が26.9%でした。
アメリカ(10.7%)やドイツ(6.5%)、スウェーデン(2.5%)と比べると、日本は子供と同居している割合が突出して高かったのです。
この3ヵ国はその代わり、「単身世帯」(アメリカ38.0%、ドイツ40.6%、スウェーデン47.9%)が多いことに目が留まります。
日本は単身世帯が15.5%ですから、20 ポイント以上も上回っています。
しかし、日本は今回「子供や孫とはいつも一緒に生活できるのがよい」と答えた人が、過去7回の調査で最も少なくなりました(毎回減少している)。
〝同居を望む〟高齢者は時代(世代)とともに、確実に少なくなっています。
同時に、日本でも単身世帯が増加しているのが現状です。
次回はその背景について、掘り下げて考えてまいります。
<つづく>
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