第2回「経済的に暮らしに困っていませんか」
4ヵ国の高齢者2800人との面談(国際比較調査)で分かったことは?
「日本と外国では、高齢者の生活意識はどのくらい違うんだろう」。
そんな問題意識を持って、国が長年にわたり調査しています。
内閣府が1980年から5年ごとに実施している「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(全8回)です。
最近(2015年度)では日本とアメリカ、ドイツ、スウェーデンの4ヵ国を対象とし、60歳以上の男女2800人(施設入所者除く)に個別面談でさまざまな問題について聴いています。
本連載記事の第1回では、日本の高齢者は4ヵ国で最多の45%が「仕事をしたい」と回答したことをお伝えしました。
今回はその〝目的〟について考察してみます。
なぜ日本の高齢者はよく働くのだろうか
A.あなたの「主な収入源」は何ですか?
公的年金の比率が格段に少ないアメリカ
あなたの「主な収入源は何ですか」と尋ねました。
4ヵ国すべてで「公的な年金」という回答が最も多くなっています(日本70.8%、アメリカ55.0%、ドイツ77.2%、スウェーデン72.6%)。
但し、アメリカは55%と他の3ヵ国(70%台)より格段に少ないです。
次いで多いのが、日米では「仕事による収入」(日本23.4%、アメリカ22.5%)で、ともに2割台でした。
日米はドイツ(10.3%)やスウェーデン(16.7%)より、収入源に占める〝仕事〟の比率が高くなっています。
B.毎月どのくらいの収入がある?
一番収入が少ないのは21万7千円の日本
それでは、「1ヶ月当たりの収入(税込)はいくらですか」と聞きました。〈注:内閣府の本調査では各国の物価水準の違いは考慮していない〉
平均額で一番少ないのは、なんと21万7千円の日本。
日本とドイツは「10 万~20 万円未満」(日本30.5%、ドイツ29.2%)の低収入の人たちが多かったのです。
日本では10万円未満の14.3%を合わせると、半分近い人たち(44.8%)が「20万円未満」で暮らしています。
一方、アメリカとスウェーデンは「40 万円以上」(アメリカ28.2%、スウェーデン38.6%)の高収入の人たちが多いです。
特にスウェーデンの平均収入は30万円を超えており、20万円未満の人たちはわずか17.5%にすぎません。
さすが、世界屈指の福祉国家と言われるだけあるでしょう。
C.日々の暮らしに困っていませんか?
「困っている」はアメリカが3割を超え最多
続いて、「経済的に日々の暮らしに困ることはありますか」と尋ねました。
各国とも最も多かったのが「困っていない」との回答(日本は51.6%)。
「困っている」と「少し困っている」を合わせた割合では、アメリカが3割を超えて(31.5%)最も高かったです。
次いでドイツ(22.8%)、日本(22.5%)、スウェーデン(12.7%)の順になっています。
【編集部より一言】日本の高齢者が働く目的は〝収入〟?!
日本やドイツより平均収入の多いアメリカですが、不思議なことに、「日々の暮らしに困ることがある」という回答が断トツで高い割合でした(最も少ないスウェーデンの2.5倍)。
なぜ収入が多くても、暮らしにくいのでしょうか?
前述の通り、アメリカは主な収入源に占める〝公的年金〟の割合が55%と、他の3ヵ国(70%台)より極めて少ないのが実状です。
一方、アメリカと日本では主な収入源に占める〝仕事〟の比率がドイツやスウェーデンより高くなっています。
公的年金に頼れないアメリカ、そして収入の少ない日本では、〝収入を得るために働かざるを得ない〟という現実があるのかもしれません。
<つづく>