【4月施行の70歳就業法特集】70歳定年延長で、高齢者は本当に働きたいのでしょうか?

希望すれば70歳まで働けるようにする「改正高年齢者雇用安定法(70歳就業法)」が今年4月に施行され、企業には70歳まで就業機会を確保するよう努める義務が課されました。

この70歳就業法をめぐっては、当事者である高齢者の皆さんは果たして、新たな制度の下で働きたいという意欲はあるのでしょうか。

今回は、これまで当サイトでお伝えしてきた各種アンケート調査や企業の取り組み、行政の支援策といった情報(記事)を取りまとめ、働く高齢者の意識などを探ってまいります。

【目次】
第1回『定年後の再雇用の年収は44%減、働く高齢者のモチベーションは上がるのか?』
第2回『70歳定年延長で高齢者の働く機会は増えるのか?』
第3回『働きたい高齢者に朗報!家電量販店ノジマが定年を65歳から80歳へ引上げる』
第4回『【定年後の生活問う意識調査】高齢者ほど「今の仕事で働き続けたい!」』
第5回『【70歳定年延長問題】東京都、高齢者が活躍できる職場作りへ支援開始!』

第1回『定年後の再雇用の年収は44%減、働く高齢者のモチベーションは上がるのか?』

「70歳就業法」の施行から約2ヵ月が経った5月末、高齢者の就業の実態に関する調査結果が発表され、定年後の再雇用では年収が平均44.3%減となっていること、再雇用後も過半数は職務が変わらないことなどが明らかになりました。

今、意欲のある高齢者を活用したいという企業は増えていますが、果たして働く側のモチベーションは上げられるのでしょうか。

再雇用後、過半数は職務が変わらない

この調査データは「シニア従業員とその同僚の就労意識に関する定量調査」。
シンクタンク・コンサルティング事業大手のパーソル総合研究所(東京・千代田区)が今年1月、全国3千人のシニア従業員などを対象に実施し、5月末に発表したものです。

今回は、働く高齢者に関わるテーマを中心にご紹介しましょう。

問い:定年後再雇用者の年収や職務に変化はありましたか?

定年後の再雇用による年収の変化について聞いたところ、約9割の人は年収が下がっていました。
(定年前とほとんど変わらない人は8%、定年前より上がった人は2.2%)

その年収の金額については、平均で44.3%も下がっていたのです。

詳しく見てみますと、50%程度下がった人が22.5%、50%以上も下がった人が27.6%と、再雇用者のうち約5割の人は年収が半分以下でした。

次に、再雇用者に職務の変化について聞いたところ、過半数の人が「ほぼ同様の業務」と回答。
そう回答した人たちも、年収が平均39.3%下がっていたのです。

このような実態について、今回の調査報告書では「同一労働同一賃金やシニア人材のモチベーションの観点から、問題ではないか」とコメントしています。

第2回『70歳定年延長で高齢者の働く機会は増えるのか?』

70歳就業法に対応する企業、まだ半数以下

70歳就業法で「高年齢者就業確保措置」が努力義務となった企業サイドでは、果たしてどう考えているのでしょうか。

人材・広告事業大手のマイナビは今年1月、企業の中途採用担当者1,333名にアンケートを行い、「70歳就業法にどう対応するか」聞きました。

その結果、「何らかの対応をする」(「検討中」を除く)と回答した企業は47.1%(※1)で、半数に満たなかったのです。
(※1)「定年を延長する(16.9%)」+「定年を撤廃する(8.9%)」+「再雇用制度を手厚くする(21.3%)」の合計

上場企業では60.5%が対応予定でしたが、未上場企業は41.6%にとどまっています。

【グラフ】「70歳就業法」への対応について


〈出典:企業の雇用施策に関するレポート(2021年版)〉

今回の「高年齢者就業確保措置」はあくまでも罰則のない努力義務ですので、まだ対応を検討中の企業が多いものと思われます。

「シニアの豊富な経験を生かしたい」という企業がもっと出てくるよう、今後に期待したいところです。

第3回『働きたい高齢者に朗報!家電量販店ノジマが定年を65歳から80歳へ引上げる』

従業員の定年を65歳からなんと80歳へ大幅に引き上げた企業が現われ、話題になっています。

大手家電量販店のノジマ(本社:横浜市)が2020年7月末に発表した新しい人事制度ですが、
同社では「シニアの豊富な経験や能力を活用したい」「働くシニアを応援していきたい」と話しています(人事総務部)。

シニアの豊富な経験と能力を活用したい!

同社は2020年7月より、これまで65歳だった定年を80歳へ引き上げました。
本社従業員と店頭販売員の約3000人を対象に行われます。

きっかけは高年齢者雇用安定法が改正され、2021年4月から企業は「70歳までの就業機会の確保が努力義務」となったことです。
これを受けて、同社は超高齢社会の流れを読み、一気に80歳まで定年を延長することにしました。

「少子高齢化が進む中、これからは優秀な人材を獲得していくことが何よりも会社の成長にとって必要です。そのため、シニアの豊富な経験や能力を活用していきたい」と狙いを説明しています。

⇒ 【高齢者と企業をマッチング】アクティブシニア向けジョブマッチングサービス「アライクワーク」が事前登録を開始

第4回『【定年後の生活問う意識調査】高齢者ほど「今の仕事で働き続けたい!」』

ネットにぎわす「働きたい人がそんなに多いとは驚き!」

日本生命保険が2020年9月に公表した、定年退職後の生活に関するアンケートの結果によると、回答者(約7500名)の64%が「定年後も働き続けたい」と希望していることが分かりました。

この調査結果が報道されると、「働きたい人がそんなに多いとは驚き」などのコメントがネット上をにぎわせています。

「定年後も働き続けたい」が6割(全世代平均)

同社が保険契約者を対象に行ったアンケートは、20代から70代までの7543人から回答を得ました。

「定年後のプランはどのようにお考えですか?」という質問に対しては、次の3つの選択肢が用意されています。

このうち「現在の仕事を続けたい」が38.7%、「別の仕事をしたい」は25.3%で、合わせて64%が働き続けることを希望しました。

出典:「ニッセイ インターネットアンケート 2020年」(以下の表も同じ)

❑分析してみるとー
➊全世代平均で64%の人が、定年後も「仕事を続けたい」。
➋年齢が高いほど、「現在の仕事を続けたい」という人が多い。
➌その一方、若い世代ほど「働かずに、違うことをしたい」という人が多い。

➍世帯年収が高いほど、「現在の仕事を続けたい」という人が多い。
➎その一方、世帯年収が低いほど「働かずに、違うことをしたい」という人が多い。

⇒【生涯現役で働く高齢者】今も夢を追う総務部員、画家、写真家たちのプロ精神に学ぶ

第5回『【70歳定年延長問題】東京都、高齢者が活躍できる職場作りへ支援開始!』

東京都が、高齢者にとって働きやすい職場づくりへ乗り出しました。
2020年10月、高齢者が活躍できる職場づくりを支援する都の「高齢者活躍職場改善モデル事業」が始まったのです。

「高齢者活躍職場改善モデル事業」、参加企業の募集スタート!

この事業は中小企業10社をモデル企業として認定し、都が課題解決に向けたコンサルティングを提供しながら、企業を支援していくというものです。
東京都が10月から、参加企業の募集を開始しました。

対象となるのは、都内で事業を営んでいる300人以下の中小企業です。
そして、高齢者が継続して活躍できる職場づくりに向けて、作業方法の改善など所定の3つの取組みを実施することが条件となっています。

東京都がこの事業に力を入れるのは、「改正高年齢者雇用安定法」が2021年4月に施行されるからです。

同法では、65歳から70歳までの就業の機会確保が企業の努力義務となります。
高齢者の雇用にあたっては職場環境や労働安全衛生への配慮、新たな技術や知識に対応できる教育訓練といった、働く意欲を高める取組みが必要です。

そこで、都では今回の事業の成果(モデル企業の取組み事例)を広く発信していくと話しています。


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