【国が“近居ブーム”の実態調査】団塊世代など戦後生れ60~70代の高齢者の本音、「子供の世話にはなりたくない」が明らかに

いま、「近居」が静かなブームを呼んでいます。

近居とは、親世帯と子世帯が気軽に行き来のできる近い距離に住むこと。
何かあったときに助け合える距離でありながら、同居と違いプライバシーを守れる点などが人気の理由です。

特にここ数年は、高齢になった親が子供の家の近くに転居するケース(いわゆる「呼び寄せ」)が増える一方で、子供との同居は減っています。

そんな「同居ではなく、ほど良い距離感の“近居”を望む高齢者」について、内閣府が調査に乗り出しました。
その結果、団塊世代など“戦後生まれの若い60~70代の高齢者”に「近居志向が強い」ことなどが明らかになったのです。

詳細を見ていきましょう。

⇒「呼び寄せ」とは?|高齢者に分かりやすく解説

80代・祖父母世代の価値観は、子との同居が当然?!

この調査データは、内閣府(政策統括官)が公表した「高齢者の住宅と生活環境に関する調査」(2018年度)。
調査員が60 歳以上の男女1,870 名に面接して意向を聴取し、取りまとめたものです。

「老後は子供が世話をするもの」から「子供には頼りたくない、世話になりたくない」という意識が60~70代を中心に広がるなか、今回の調査では「同居は否定しながらも近居を求める人」が3 割前後もいることが分かりました。

調査結果のポイントは次の通りです。

1.近居を希望する人の特徴(傾向)とは

子供がいるという1,687名に、『子と同居や近居をしたいと考えていますか?』と尋ねました。

今回、「近居」の定義については『住居は異なるものの、日常的に往来できる範囲〈同一中学校区内程度(約6㎞以内・車で15 分以内程度)〉に居住すること』としています。

その結果は―。

    【子供との「同居」または「近居」に対する意向は?】

1位「子供と同居したい」(34.8%)
2位「同居ではなく近居がしたい」
(29.0%)
3位「同居も近居もしたくない」
(18.9%)
4位「同居か近居のどちらかをしたい」
(9.6%)

次のような傾向が見られました。

➊「同居派」の主な傾向

⑴女性が多い
・60 代の女性では「近居したい」が最多でしたが、70 代以降の女性は「同居したい」の方が上回っています。
女性は年齢が上がるほど「同居したい」が多くなり、「近居したい」が少なくなったのです。
⑵年齢の高い高齢者に多い
・80歳以上では男女とも「同居したい」が約5割を占めました。
⑶配偶者がいない人に多い

➋「近居派」の主な傾向

⑴女性が多い
⑵年齢の低い(若い)高齢者に多い
⑶現在、子供と別居している人に多い

この調査結果に対しては、公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団の澤岡 詩野主任研究員がこう論評しています。

『年齢が低くなるほど、近居を求める人が多くなっている。
こうした若い高齢世代(親世代)は、同居を前提にした家族規範が当たり前の祖父母の世代に対し違和感を持っていることが考えられます。
調査結果は、世代間の価値観ギャップの現れではないでしょうか。
また、同居や近居を求める人が男性に少ないのは、一国一城の主でいたいという家長としてのプライドの現れとも言えます』

⇒【60歳からのシニア女性専用シェアハウス】離れて暮す高齢の親を呼び寄せたい!

2.同居や近居のメリットは何でしょうか?

子供と同居または近居したいという1,238 名に、次のように聞きました。
『同居または近居をすると、どんなメリットがあると思いますか?(〇はいくつでも)
その結果は―。

メリットの1位は「手助けが必要なときに安心」

    【同居または近居をする場合のメリットは何ですか?】

1位「ちょっとした手助けが必要な場合に安心して過ごせる」(81.3%)
約8 割が「はい」と回答し、圧倒的に高かった項目です。

2位「自立した生活ができなくなった場合に世話をしてもらえる」(51.0%)
「同居したい」で顕著に高く、「近居したい」で最も低かった。
男女とも年齢が上がるにつれて高くなりました。

今回の調査対象は、8 割以上が健康状態を良好と回答したことから、すぐに介護が必要な人たちではありません。
しかし、日常で手助けが必要なとき、自立生活が難しくなったときはどうしようという不安はあるでしょう。
特に同居を希望する人は、介護などをメリットとして考える傾向がありました。

3位「子や孫の世話ができる」(22.3%)
この項目は2 割程度と低く、「子や孫に経済的な援助ができる」という項目も1 割弱にとどまった。
但し、60~64 歳では男女とも約4割と高く、年齢が上がるにつれて低くなっていきました。

4位「家賃や光熱費等を節約できる」(9.9%)
同居のメリットだけに、「同居したい人」からの回答が多かったです。

5位「経済的な援助を得られる」(9.7%)
「同居したい人」からは最も高くなりました。

これまで見てきたように、高齢者は子供の近くにいることを求めつつも、同居派と近居派ではそれぞれの価値観が大きく異なることが分かりました。

高齢になった親が支援を必要とするとき、子供との距離感はどのように取るべきか、よく考えておきたいところです。

本記事と画像の出典:内閣府「高齢者の住宅と生活環境に関する調査」(平成30年度)、澤岡 詩野氏の論文「子供との近居を希望する高齢者についての分析」

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