【総集編/4ヵ国の高齢者調査】日本と外国ではシニアの生活意識はどう違う?

4ヵ国の高齢者2800人との面談(国際比較調査)で分かったことは?

年の瀬の今号は2020年を振り返り、本年前半の連載記事『4ヵ国の高齢者調査/日本と外国ではシニアの生活意識はどう違う?』を取りまとめました。国際比較調査の特別総集編をお届けいたします。

「日本と外国では、高齢者の生活意識はどのくらい違うんだろう」。
そんな問題意識を持って、国が長年にわたり調査しています。

内閣府が1980年から5年ごとに実施している「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(全8回)です。
最近(2015年度)では日本とアメリカ、ドイツ、スウェーデンの4ヵ国を対象とし、60歳以上の男女2800人(施設入所者除く)に個別面談でさまざまな問題について聴いています。

今回の総集編では就労意欲、収入面・暮らしぶり、友人・近所づきあい、住まいの問題をめぐる意識調査を紹介するとともに、日本社会の課題についても改めて考えてみました。

【目次】
第1回「仕事はしたい?したくない?」
第2回「経済的に暮らしに困っていませんか」
第3回「ご近所や友人とお付き合いしていますか」
第4回「今の住宅は住みやすいですか」

第1回「仕事はしたい?したくない?」

日本のシニアが仕事するのは「収入が欲しいから!」

A.仕事はしたい?したくない?
「仕事したい」は日本が45%で最多!

B.仕事をしたい理由は?
日本のシニアは「収入が欲しいから!」
ドイツとスウェーデンは「仕事が面白いから」

資料:内閣府「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査(平成27 年)」<以下のグラフ、表も同じ>

【編集部より】日本のシニアへもっと多くの仕事の機会を

この4ヵ国すべてで高齢者の半数以上が「仕事はしたくない」と答えていますが、日本は最多の45%が「仕事をしたい」と回答しました。
日本では高齢者に向けて、もっと多くの就業の機会を提供する必要があると思います。

しかし日本の高齢者は、一方では〝働かざるを得ない事情〟があることも分かりました。
そのあたりは、次回ご紹介しましょう。

第2回「経済的に暮らしに困っていませんか」

なぜ日本の高齢者はよく働くのだろう

A.あなたの「主な収入源」は何ですか?
公的年金の比率が格段に少ないアメリカ

B.毎月どのくらいの収入がある?
一番収入が少ないのは21万7千円の日本

C.日々の暮らしに困っていませんか?
「困っている」はアメリカが3割を超え最多

■日々の暮らしに困ることがあるか(%)

【編集部より】日本の高齢者が働く目的は〝収入〟?!

日本やドイツより平均収入の多いアメリカですが、不思議なことに、「日々の暮らしに困ることがある」という回答が断トツで高い割合でした(最も少ないスウェーデンの2.5倍)。

なぜ収入が多くても、暮らしにくいのでしょうか?
前述の通り、アメリカは主な収入源に占める〝公的年金〟の割合が55%と、他の3ヵ国(70%台)より極めて少ないのが実状です。

一方、アメリカと日本では主な収入源に占める〝仕事〟の比率がドイツやスウェーデンより高くなっています。

公的年金に頼れないアメリカ、そして収入の少ない日本では、〝収入を得るために働かざるを得ない〟という現実があるのかもしれません。

第3回「ご近所や友人とお付き合いしていますか」

なぜ日本の高齢者は友だちが少ないのだろう

A.近所の人とはお付き合いしていますか?
「病気の時に助け合う」は日本が大差で最下位

B.相談し合う親しい友人はいますか?
日本の高齢者は、4人に1人は親友がいない?

【編集部より】もっと地域のコミュニティに参加を促したい!

日本では一人暮らしの高齢者世帯がますます増えているのはご存じの通りです。
2016年には高齢者のいる世帯のうち、27%を占めるまで上昇しています。

こうした中、今回の国際比較調査で浮き彫りになったのは、やはり日本の社会が「人との距離が遠い国民性」「孤独に暮らす高齢者の多い国」といった内外のイメージ通りの状況だったことです。

前述のように、近所の人との付き合いにおいて「相談する」「病気の時に助け合う」人たちの割合は4ヵ国で最低の水準。そして「相談や世話をし合ったりする友人はいない」という人たちが最も多い国。

日本ではここ数年、「無縁社会」や「孤独死」という言葉が話題になっています。
そんな社会環境を改め、高齢者が〝地域社会から孤立しない〟ようにするため、何かできることはないのでしょうか。
例えば、もっと地域のコミュニティに参加してもらうための取り組みもその一つだと思います。

第4回「今の住宅は住みやすいですか」

なぜ日本の住宅は住みにくいのだろう

A.今の住宅に問題はありますか
改修しない日本の家は「古くて傷んでいる」

【編集部より】
欧米では持ち家を改修し不動産の資産価値を高める習慣が根づいている一方、日本では戸建など中古住宅のリフォームに消極的なことが、住みにくいという日本の回答の背景にありそうです。

B.身体機能が低下したときも自宅は住みやすい?
日本は「住みやすい」が断トツの〝最下位〟

■身体機能が低下した場合の住宅の住みやすさ

C.身体機能が低下したときに住みたいところは
4ヵ国とも6~7割が「自宅に住み続けたい」

【編集部より】
日本は、高齢者用住宅を挙げる人が他国ほどいませんでした。
日本では特に(インディペンデント・リビング等のある)アメリカと比べると、自立者向けの高齢者住宅がまだまだ少ないのが現実。
これからはその供給を急ぐことが課題と言えそうです。

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