
真夏に大規模な地震が発生すると、建物の倒壊や津波、火災だけでなく、停電によってエアコンが使えなくなることや、断水によって十分な水分や衛生環境を確保できなくなることも深刻な問題になります。
2026年7月28日には、熊本県熊本地方を震源とする地震により、熊本県宇城市と氷川町で最大震度7が観測されました。
余震への警戒が続くなか、酷暑の時期には熱中症や感染症、車中泊による体調悪化にも注意しなければなりません。
特に重要なのが、救命・救助活動が優先される発災後72時間を、自分や家族の備えでどう乗り切るかという視点です。
この記事では、酷暑のなかで地震が起きた場合を想定し、発災後72時間の行動、夏の防災リュック、車中泊の熱中症対策、避難所で感染症と熱中症を同時に防ぐ方法について詳しく解説します。
防災対策というと、水や非常食、懐中電灯などをイメージする方も多いかもしれません。 しかし、高齢者の場合はそれだけでは不十分な場合があります。 持病の薬、補聴器、入れ歯、夜間の移動、エレベーター停止など、シニア世代ならではの課題があるためです。 また、一人暮らしの高齢者世帯も増え...
地震発生後72時間が重要とされる本当の理由

「72時間を過ぎると助からない」という意味ではない
72時間は人の生存可能時間を一律に示す期限ではなく、行政や消防、警察、自衛隊などが救命・救助活動を最優先する初動期間として位置づけられています。
この期間に道路へ人や車が集中すると、救急車や緊急車両、物資輸送車両の通行を妨げる可能性があります。
そのため、安全な場所にいる場合は、むやみに遠距離を移動しないことも重要です。
発災直後は支援物資がすぐに届くとは限らない
道路の寸断や渋滞、物流拠点の被災などにより、避難所へ十分な飲料水や食料、冷却用品が届くまで時間がかかる可能性があります。
特に夏は、水を飲むためだけでなく、服薬、簡単な調理、身体の清拭などにも水が必要です。
一般的な備蓄量に加え、暑い時期は飲料水を多めに用意しておく必要があります。
酷暑下では「3日分」だけでなく停電期間も想定する
食料や飲料水を3日分そろえていても、停電が長引けばエアコンや扇風機、冷蔵庫、給水設備が使えない場合があります。
自宅が安全であっても、室温が上がり続ける場合は在宅避難にこだわらず、空調が確保された避難所、公共施設、親族宅などへ移る判断が必要です。
地震発生から72時間までの酷暑対策

発生直後は安全確保と避難経路の確認を優先する
まずは落下物や家具、ガラス、火災から身を守ります。
津波や土砂災害の危険がある地域では、暑さ対策用品を探し続けるのではなく、直ちに安全な場所へ避難します。
避難する際は、帽子や日傘、飲料水、スマートフォン、モバイルバッテリーなど、すぐに持ち出せるものに絞ります。
停電した室内にとどまり続けない
停電中の住宅は、窓を開けても室温が十分に下がらない場合があります。
特に最上階、西日の当たる部屋、鉄筋コンクリート造の集合住宅では、夜間になっても室内に熱がこもることがあります。
室温や体調を確認し、頭痛、吐き気、めまい、強いだるさなどが出る前に、空調の使える場所へ移動します。
厚生労働省も、被災地では室内や車内の温度上昇に注意し、こまめな水分・塩分補給を行うよう呼びかけています。
水分を控えてトイレを我慢しない
避難所のトイレが混雑していることや、断水していることを理由に、水分を控えるのは危険です。
脱水は熱中症だけでなく、血栓症、尿路感染症、心筋梗塞などのリスクにもつながります。
高齢者はのどの渇きに気づきにくいため、時間を決めて水分を取る工夫が必要です。
片付け作業は涼しい時間帯に限定する
被災直後は、倒れた家具や割れた食器をすぐに片付けたくなりますが、酷暑のなかでの作業は熱中症の危険を高めます。
緊急性のない片付けは朝夕に行い、日中は避けます。
長袖、手袋、底の厚い靴、帽子を着用し、20~30分ごとを目安に休憩を取る構成にします。
夏の防災リュックに追加したいアイテム10選

1.常温保存できる飲料水
一般的な備蓄とは別に、すぐ飲める500ml程度のペットボトルを複数用意します。
大容量ボトルだけでは、避難時に持ち運びにくい点に注意が必要です。
2.経口補水液
大量に汗をかいたときや、脱水症状が疑われるときに備えます。
日常的な水分補給用ではなく、必要時に使用することを前提とします。
3.塩分補給食品
塩分タブレットや塩あめなど、持ち運びやすく個包装されたものを選びます。
ただし、持病によって塩分制限がある人は医師の指示を優先します。
4.冷感タオル
水で濡らして使えるものなら、電源がなくても首元や脇の下を冷やせます。
5.瞬間冷却パック
叩くことで冷えるタイプは、停電時にも使用できます。
ただし、使用時間が短いため複数個準備します。
6.充電式または電池式の携帯扇風機
モバイルバッテリーだけでなく、乾電池でも使えるタイプを選ぶと電源を分散できます。
携帯扇風機だけで熱中症を防げるわけではなく、高温環境では涼しい場所への移動を優先します。
7.帽子または折り畳み日傘
屋外避難や給水所での待機、物資の受け取り時に直射日光を避けるために使用します。
8.汗拭きシート・身体清拭シート
断水時に身体を清潔に保ち、汗や皮脂による不快感、皮膚トラブルを軽減します。
9.予備の下着と速乾性の衣類
汗で濡れた衣類を着続けると、皮膚トラブルや体力低下につながります。
綿だけでなく、乾きやすい素材を選びます。
10.常備薬・お薬手帳
避難生活が長引くと、かかりつけの医療機関や薬局が被災し、普段飲んでいる薬をすぐに受け取れない可能性があります。
高血圧や糖尿病、心臓病などの治療薬を服用している人は、可能な範囲で数日分の常備薬を持ち出せるように準備しておきましょう。
薬の名称や服用量が分かるお薬手帳も重要です。紙のお薬手帳が持ち出せない場合に備え、薬の説明書や薬袋をスマートフォンで撮影しておく方法もあります。
ただし、薬を防災リュックに長期間入れたままにすると、使用期限が切れたり、高温によって品質が低下したりする可能性があります。
普段使用する薬を少し多めに管理し、定期的に入れ替える方法が現実的です。
車中泊をするときの熱中症対策

真夏の車内を避難所代わりにし続けない
車はプライバシーを確保しやすい一方、日差しが当たると短時間で車内温度が上昇します。
窓を少し開けたり、携帯扇風機を使ったりするだけでは十分に温度を下げられない場合があります。
日中は原則として空調設備のある避難所などで過ごし、車内にとどまる時間を減らします。
厚生労働省も、被災地では車やテント内の温度上昇に注意するよう案内しています。
エンジンをかけたまま眠らない
エアコンを使うためにエンジンをかけ続けると、燃料切れや排気ガスによる一酸化炭素中毒の危険があります。
特に建物の近く、狭い場所、マフラー周辺が土砂や荷物でふさがれている状況では危険性が高まります。
周囲の安全が確認できない場所での長時間のアイドリングは避けます。
車を日陰へ移動し、窓を覆う
可能であれば、日陰や立体駐車場など、直射日光を避けられる安全な場所へ移動します。
サンシェードや遮光シートで日差しを遮りますが、窓を全面的に覆う場合は、防犯面や緊急情報への気づきにくさにも注意が必要です。
水分補給とトイレを我慢しない
車中泊では、トイレに行く回数を減らすために水分を控えがちです。
しかし、脱水によって熱中症や血栓症のリスクが高まります。
水分を取り、数時間ごとに車外へ出て足首やふくらはぎを動かします。
高齢者・乳幼児・ペットを車内に残さない
気温がそれほど高くないように感じても、車内は急激に暑くなる可能性があります。
短時間であっても、暑さに弱い人やペットを車内に残さないことが原則です。
避難所で感染症と熱中症を同時に防ぐ方法

換気だけに頼らず室温を確認する
感染症対策として換気は重要ですが、真夏に窓を開け続けることで室温が上昇する場合があります。
換気と冷房を両立し、温湿度計や暑さ指数を確認しながら、換気時間や方法を調整します。
マスクは状況に応じて使い分ける
せきや発熱などの症状がある人や、混雑した場所ではマスクが感染拡大防止に役立ちます。
一方、暑い場所での長時間着用により息苦しさや体温上昇を感じる場合は、人との距離を確保したうえで外し、水分補給や休憩を行います。
感染対策のために熱中症を悪化させない運用が必要です。
発熱者と熱中症が疑われる人を混同しない
発熱、だるさ、頭痛、吐き気は、感染症と熱中症のどちらでも起こる可能性があります。
「暑さのせい」「風邪だろう」と自己判断せず、避難所のスタッフや医療担当者へ早めに伝えます。
意識がもうろうとしている、自力で水を飲めない、呼びかけへの反応がおかしい場合は、速やかな救急対応が必要です。
手洗い用の水がない場合に備える
断水時は、アルコール消毒液やウェットティッシュを使用します。
食事前、トイレ後、共有物に触れた後は、可能な範囲で手指を清潔に保ちます。
避難所では感染性胃腸炎などが広がりやすいため、タオルや飲料容器、箸などの共用も避けます。
冷房の効く区画を要配慮者へ優先する
高齢者、乳幼児、妊婦、障害のある人、持病のある人は、暑さによって体調を崩すリスクが高くなります。
冷房が限られている場合は、暑さに弱い人を優先して空調の効く場所へ案内し、周囲が水分摂取や体調の変化を確認する体制を整えます。
ごみ・生ごみ・汚物を生活空間から離す
夏の避難所では、ごみや食べ残し、使用済みおむつ、簡易トイレの排泄物から臭いや害虫が発生しやすくなります。
ごみは密閉し、生活区域から離れた指定場所へ集めます。
水たまりやごみ集積場の周辺も定期的に確認し、蚊やハエの発生を抑えます。
高齢者は「自宅・避難所・車」のどこにいるべきか判断する

自宅が安全でも室温が高ければ移動する
建物に大きな損傷がなくても、停電で冷房が使えず、室温が上がっている場合は安全とはいえません。
自宅の耐震性だけでなく、室温、断水状況、体調、周囲から支援を受けられるかを含めて判断します。
避難所へ持病や服薬情報を伝える
高齢者は、常備薬、お薬手帳、保険証やマイナンバーカードの写し、かかりつけ医の連絡先を持参します。
水分や塩分の摂取量に制限がある場合は、自己判断で一般的な熱中症対策を行わず、避難所の医療担当者へ相談します。
一人で我慢せず早めに支援を求める
「ほかの人も大変だから」と体調不良を我慢すると、症状が急激に悪化する可能性があります。
食事が取れない、尿が極端に少ない、普段と受け答えが違う、足元がふらつくといった変化がある場合は、本人だけでなく周囲の人が早めに申し出ることが重要です。
まとめ|酷暑の地震対策は発災後72時間を具体的に想定する

酷暑の時期に大地震が発生すると、揺れや建物被害を免れた後も、停電、断水、熱中症、感染症といった二次的な危険が続きます。
特に発災後72時間は、行政機関が救命・救助活動を優先する期間です。
支援がすぐに届かない状況を想定し、飲料水や食料だけでなく、冷却用品、清拭用品、速乾性の着替え、温湿度計などを準備しておく必要があります。
また、車中泊や在宅避難にこだわらず、室温や体調に応じて空調のある場所へ移る判断も大切です。
地震対策と熱中症対策を別々に考えるのではなく、「真夏に電気と水が止まった状態」を具体的に想定して備えておきましょう。
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