第6回「子供や孫と会っていますか」
4ヵ国の高齢者2800人との面談(国際比較調査)で分かったことは?
「日本と外国では、高齢者の生活意識はどのくらい違うんだろう」。
そんな問題意識を持って、国が長年にわたり調査しています。
内閣府が1980年から5年ごとに実施している「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(全8回)です。
最近(2015年度)では日本とアメリカ、ドイツ、スウェーデンの4ヵ国を対象とし、60歳以上の男女2800人(施設入所者除く)に個別面談でさまざまな問題について聴いています。
本連載記事の第6回は、〝子供や孫とのつき合い方〟をめぐる日本と欧米の異なる価値観について考察してまいります。
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世代交代進む高齢者、欧米の価値観に近づく?!
A.離れて暮らす子供とは、どのくらい会っていますか
別居する子供とは交流の少ない日本
「別居している子供とは、どのくらい会ったり、電話等で連絡していますか」と尋ねました。
日本とドイツ、スウェーデンでは、「週1回以上、会ったり連絡している」という人たちが最も多かったです(日本30.9%、ドイツ37.7%、スウェーデン48.1%)。
次に多いのは、日本が「月1~2回」(26.8%)、ドイツとスウェーデンは「ほとんど毎日」(ドイツ24.8%、スウェーデン30.0%)でした。
一方、アメリカでは最も多いのが「ほとんど毎日」(42.9%)、次いで「週1回以上」(35.7%)。
子や孫たちとの交際は、アメリカが4ヵ国で最も頻度が高かったのです。
反対に、日本は子供との交流が最も少ない国でした。
B.子供や孫とは、どの程度のつき合いがいいですか
4ヵ国とも「ときどき会うくらいがいい」
「子供や孫とは、どの程度のつき合いがいいですか」と聞いてみました。
4ヵ国とも最も多かったのが、「子供や孫とはときどき会って食事や会話をするのがよい」(日本50.5%、アメリカ61.1%、ドイツ69.0%、スウェーデン72.7%)でした。
一方、「子供や孫とはいつも一緒に生活できるのがよい」(同居を希望)は日本が4ヵ国で断トツの1位(27.1%)です。
しかし、日本は今回、過去8回の調査で最も少ない数値となりました(1980年の59.4%から毎回減少している)。アメリカとドイツも前回より少なくなっています。
【編集部より一言】日本でニーズ高まる「親世帯と子世帯の〝近居〟」
日本の高齢者は40年前の第1回調査より一貫して、「子供や孫とは、いつも一緒に生活できるのがよい」(同居)を望んでいました(最多の回答)。
しかし、「ときどき会って食事や会話をするのがよい」が2005年(第6回)の調査で初めて最多となって逆転。それ以降は両者の差(数値)がどんどん広がっています。
核家族化が進んでいくなか、同居(大家族志向)を希望する高齢者は年を追うごとに少なくなったのです。
そんな日本では昨今、新たな動きとして〝近居(きんきょ)〟のニーズが高まってきました。
近居とは、親世帯と子世帯が近い距離に住むこと。
同居と比べると、各世帯のプライバシーが守れますし、「ときどき会える」のが人気の理由の一つです。
元来アメリカでは、40年前から常にトップの回答(6~7割)は「ときどき会うくらいがいい」であり、同居を望まない自立した考え方が定着しています。
日本の高齢者も時代(世代交代)とともに、欧米の価値観に近づいているのでしょうか。
<つづく>
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