82歳で初の個展を開催し、高い技術力で数々の賞を受賞
『人は何歳からでも始められる』そう思わせてくれる“スーパーおばあちゃん”が、いま話題を呼んでいます。
89歳にして現役の写真家・西本 喜美子さん(熊本市在住)です。
なにしろ72歳で初めてカメラを手にし、74歳のときにパソコンを購入。写真を加工する編集ソフトも使いこなしています。
82歳で初の個展を開催し、高い技術力で数々の賞を受賞したというスゴ腕です。
それら作品群の中でも特に強いインパクトを放つのが「自撮り写真」。
ご自身が天使の装いで宙に浮いたり、オリの中のゴリラに扮したり。並はずれたユーモアと若々しい感性に驚かされます。
そんな西本さんにとって写真とは、どのような存在なのでしょうか。その想いを聞いてみました。
夫と死別も、カメラをのぞくと聞こえる声「ひとりじゃなかよ」
「カメラなんか触ったこともないし、皆さんに迷惑かな?」そう心配しつつ、72歳のとき友人に半ば強引に誘われ、通い始めた写真塾。
すぐに、楽しくて楽しくてたまらなくなったそうです。
自宅の一部を写真スタジオに改修してしまうほど夢中になりました。
「三脚やリモコン、セルフタイマーの使い方も習ったし、次は自分自身の写真でも撮ってみようかしら。
面白いと思った構図や、自分でもウフッと笑えるものなら全部やってみたい!」そんなワクワク感が抑えられない西本さん。
ちょうどご主人も昔からのカメラ好きでしたので、一緒に撮影に出かけることも。ご夫婦でとても充実した毎日を過ごしていました。
ところが、ご主人がガンを患って長い闘病生活へ。とうとう5年前、60年近く連れ添ったご主人を亡くされてしまいます。
「こんな日が来るなんて、私ひとりぼっちになっちゃった。(深い絶望感の中)ふと主人が買ってくれたカメラをのぞいてみたの。すると、レンズの向こうにあるものがみんな私に、“がんばれっ、ひとりじゃなかよ”と話しかけてくれるように感じたんです」
いま西本さんは、カメラを手にしてこう思います。
「私のすぐ身近に、残りの人生を楽しめる素晴らしい道具があったなんて、写真を覚えて本当に良かった。主人や息子、写真塾で出会った仲間など全ての人たちに感謝しています」
末永くお元気で、大好きな写真を撮り続けていただきたいですね。
3人の子の育児に専念する。転機は72歳、アートディレクターの長男が主宰する写真塾に入る。
82歳で初の個展を開催。数々の賞を受賞する。
インフォメーション
◆西本さんの初の写真集『ひとりじゃなかよ』[発行:飛鳥新社、1,200円(税込)] がマスコミでも話題。
本格派の幻想的な写真に、心温まる熊本弁のエッセイが寄せられている。
ユニークな自撮り写真も収録。全国の書店やアマゾン(ネット通販)で入手可能。