当記事の前編『日本酒の伝道者が思うシニアの地元暮らし Vol.1』はこちらから
酒は文化。酒は末廣。
だから、末廣は文化の発信基地でありたい。
日本酒の伝道者が思うシニアの地元暮らし。
日本酒酒蔵元 末廣酒造 7代目 新城猪之吉氏
今や世界中で認知されている日本酒-「SAKE」。約170年の歴史を持ち、いち早く海外進出。
国内外コンペティションで数々の金賞を獲得した酒造当主に、地元を守り世界へ目を向ける自身の暮らしを語っていただいた。
(全2回に分けてお送りします)
実はダジャレ好き 地元の名士の意外な横顔
酒造りだけではなく地元へ還元するイベントを行うのも末廣当主の務め。33年前、青年会議所で活動していた時のこと。
いろいろな地域イベントを開催する中、会社のための活動も求められ11月に蔵を開放する「末廣祭」を始めた。
「11月3日は文化の日。酒は文化→酒は末廣→文化の日は末廣の日、という三段論法です。年1回必ず行い、今では1日で5千人くらい来場者があります」
10時から15時の5時間、単純計算で1時間に千人が訪れることになる。地域のいち企業の主催としては異例の盛り上がりだろう。
末廣のイベントは酒に関連することに止まらない。多忙のかたわらラジオ番組パーソナリティを務め、震災で崩れた蔵の壁を修繕し、そこに映写する「白壁映画祭」を開催し・・・と活躍している。
蔵にはコンサートホールとして開放している場所もあり落語祭を開催。友人の、中央大学法学部出身で6ヶ国語落語を得意とする異色の噺家・三遊亭竜楽氏(六代目圓楽氏の弟弟子)に来てもらう。
寄席には新城氏も出演し、芸名は「酔っ払い亭酒楽」。
「竜楽が東京から弟弟子を何人か連れてきてくれますが、どうやら電車の中で『新城さんは強敵だ。お前らではかなわない』と先にお題を教えている節があります(笑)」
大喜利は得意なんです、と笑う新城氏。今年の名作をいくつか紹介してもらおう。
「猛暑とかけて、キスを迫った時と解く。その心は?-熱中症(ね、チュウしよう)」
「末廣の酒とかけてギャンブル好きの親父と解く。-たまりません!(貯まりません)」
歴史の重みと頑固さがイメージされる会津だが、実はダジャレ好きが多いのだ。新城氏が参加する酒宴ではダジャレが飛ぶのを皆が待っている。仕事中の厳しさがほぐれ目尻に皺が寄った横顔に、根っからの酒好きが滲む。
東北の暮らしの悩みは雪と高齢化。雪対策に屋外の融雪設備が欠かせない。
フルオーダーのご自宅では一般的な電熱を使ったシートではなく配管を通し、水を流して解決している。
地域住民の高齢化は地方都市共通の問題。高齢者向けの特別な住宅は会津にはあまりない。老人ホームに入るか、一人で自宅に暮らすかが大半の選択肢だという。
「地元の医者や介護関係者に聞くと、人に面倒をみてもらうなら早めに死にたいと言っている人は多いそうです。年をとっても友達や近所の人たちと一緒にご飯を食べに行って、元気に暮らせるのが一番いいんですよ」
その地域にどう住んできたか、地域とどう付き合ってきたかがシニア生活を豊かにするカギだという。
聞き手:加藤摩耶子