キャリア40年の獣医師がすすめるシニア世代のペット共生とイキイキ生活の秘訣
著書『やさしい猫の看取りかた』でペットの終活に言及し、メディアにも多数登場している沖山峯保さん。(→「終活」とは?|おとなの住む旅 用語解説)長年の経験から、シニアとペットの上手な付き合い方を語っていただきました。(→「ペット共生型賃貸住宅」とは?|おとなの住む旅 用語解説)
峰動物病院 院長 沖山峯保氏
医療技術が進み、獣医の状況はかなり変化しました。僕が見習いの時、サラリーマンの初任給が5万円で僕は15,000円。
雇う側も「技術を教えてやっている」という考えなので、ほぼ丁稚でっち奉公です。
今は非常に良くなっています。獣医は、大学卒業後2年ほどの見習い期間を経て開業します。
僕はその後、獣医一筋40年以上。今70歳です。
1日の大半を病院で過ごすので、獣医にとっての病院は家より長くいる場。ずっと理想の職場を作りたくて今の病院を建てました。
正直、都心で地下2階、地上3階、レントゲン可の病院建設は大変で、実のところお金は全部使ってしまいました(笑)。
でも夢も叶ったし、子供も後継者もいる今は悠々自適で長年の趣味の海釣りに毎日行きます。
1日のスケジュールは診察を終えてから朝、海へ向かい午後までは海の上、夕方病院に帰る。
「いつ寝ているんですか?」と聞かれますが、昔から睡眠時間は短い体質で、いつ電話が来ても通常モードで受けられる。これは特技ですね。
しかし、43歳で胃がんを患い全摘しました。重大な病気ですが、抗がん剤を使わなかったので早期復帰できたと思っています。
獣医も医療に関わる身なので自分なりの「治療哲学」があり、治療法はよく考えて選ぶことができた。もちろんすべての人にお勧めできる方法ではありませんよ。
ただ、「病気を治すのは仕事への責任感や義務感では決してない」ということ。
イキイキと暮らす秘訣は趣味を持つことです。「仕事が趣味」はダメ。
シニアとペットの上手な付き合いは、自分を見極めること
ペットとの共生には良し悪し両面があります。例えば、認知症進行予防には一定の効果が認められていますが、最近「地域猫」の取組みに参加されたシニアが負担を抱えてしまう問題も見られます。
365日、雨でも嵐でも1日2回の餌運びはやめられません。缶詰でもドライでも何十カ所分ものフードは重く、自転車が使えてもシニアには重労働。
自分がやめたら飢えてしまうという義務感で無理をし、僕の患者さんの中にも脚を悪くされてしまった方も。
自分で飼う場合でも、シニア世代は理解力が落ち、ペットが病気になった時に薬の量や回数を一定に守れなくなることもあります。
今は1回の投薬で2週間も効き目が続く便利な薬もあるし、僕の方でも気づいたら飼い主さんに率直に「やりきれますか?」と聞くなど、相手を見極めて治療を提案します。
くれぐれも無理はしないこと。ご自身もペットも等しく命なんですから、自分のコンディションを見極めてペットと関わることが大切です。
聞き手:加藤摩耶子
峰動物病院 院長 沖山峯保氏
1948年東京生まれ。北里大学獣医畜産学部卒業。品川区に「峰動物病院」を構えて40年。来院者からの信頼厚いベテラン獣医。犬猫のほか、ウサギ、小鳥などの診察も可能。
■峰動物病院 品川区西品川1-30-10
<TEL>03-3758-8573