「リバースモーゲージ」のことはご存じでしょうか。
シニア向けの不動産担保ローンの一つですが、特にここ数年、シニア世代の間で急速に支持を広げています。
いわゆる自宅を担保にして老後の資金が借りられるローン商品ですが、自分の死後に自宅を売却して返済するところがとてもユニーク。
担保にした自宅にも住み続けられるなど、各種メリットがあります。
当サイトでは今回、いま話題のリバースモーゲージに精通する専門家の吉岡雅之氏(ファイナンシャルプランナー)に、最新の動向について寄稿していただきました。
その本文の冒頭では、都内の分譲マンション(築36年)に住む吉岡さん(61歳)が5つの銀行に対し、「近々リフォームをするけど、リバースモーゲージは利用できるか」と問い合せたときのやり取りが紹介されています。
名だたる5つの銀行は、吉岡さんにどう回答したのでしょうか。
「リフォーム資金は借りられますか?」
A銀行「融資金額は○○万円です」
B銀行「弊行の審査基準ではマンションは築30年までが対象です」
C銀行「ご本人、配偶者とも60歳以上が対象です」
D銀行「融資は可能ですが、ご本人、配偶者の両方またはいずれかが60歳未満ですと、ご本人、配偶者ともに60歳以上の場合と比較して不動産の担保評価額(昭和58年以上の新耐震基準は対象)が半分の30%となります」
E銀行「夫婦、または単身でお住まいのお客さまが対象のため、お子様が同居している方は対象外です」
銀行によって全く違う“審査基準”
上記は、都内の築36年のマンションに住む61歳の私が、近々リフォームすることを前提に、5つの銀行にネットと電話で「リバースモーゲージ」について問い合わせた結果です。
家族構成は50歳代の妻と28歳の息子と同居しています。
それぞれの銀行は、A・楽天銀行、B・東京スター銀行、C・みずほ銀行、D・三井住友銀行、E・三菱UFJ銀行です。
現状私に融資可能な銀行は楽天銀行と三井住友銀行であり、後者の融資額は妻が60歳を超えた方が多く借りられることがわかりました。
この結果でわかることは、「リバースモーゲージ」というシニア向けのローンは銀行によって全く審査基準が違うということです。
金利もそれぞれ独自の基準があり、因みに2023年7月現在で一番低い金利の提示があったのはみずほ銀行でした。
ただしその金利は、銀行の不動産評価金額の半分以下の融資額という条件付きです。
また資金使途について今回はリフォーム資金でしたが、生活資金となると楽天銀行と東京スター銀行のみ取り扱い可能となります。
銀行員時代、普及のため講師として奔走
申し遅れましたが、私はファイナンシャルプランナーの吉岡雅之と申します。
2013年に東京スター銀行に入行して「リバースモーゲージ」という金融商品を初めて知りました。
一言でいうと、契約したご本人が亡くなった時に相続人の方が元本を返済するシニア向け不動産担保ローンです。
銀行では提携先のシニアの方とのビジネスを推進するために、「リバースモーゲージ」の活用法を知っていただくための講師役を務めていました。
主な提携先はファイナンシャルプランナー、リフォーム会社、底地業者、新築マンション業者、不動産仲介業者などでした。
年齢的に住宅ローンが使えないシニアの方に「リバースモーゲージ」を活用することにより、提携先のサービスや商品を購入するのを助ける役割を果たし、とても喜ばれました。
その後、「リバースモーゲージ」を契約したお客様がローンを完済する時の業務も経験しました。
シニアの皆さんは身近なものに感じてほしい
2021年3月末に銀行を退職してファイナンシャルプランナーの勉強をしながら、人生100年時代の60歳代からの「第二の人生」について模索しました。
個人的にこの「リバースモーゲージ」というシニアの方に有用なローン商品を、もっとわかりやすく説明する役割を果たしていきたいと思いました。
シニアライフを充実したものにするための一つの手段として、30歳から40歳代の方にとって住宅購入の際に住宅ローンが身近なように、60歳代以降のシニアの方にとっても、この「リバースモーゲージ」が身近なものに感じられるように、このコラムで何回かに分けて、この商品について具体的な例をあげながらお話ししていきたいと思います。
【吉岡 雅之氏 略歴】
1987年上智大学法学部法律学科卒業後、大和証券入社。
その後、外資系金融機関で機関投資家向け債券営業や企業年金向け投資顧問営業を経験。
2013年に東京スター銀行に入行し、「リバースモーゲージ」についての勉強会やセミナー講師を務める。
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。
<つづく>
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