ペットを飼い始めるきっかけは「かわいいから」「子どもの情操教育の一つとして」など人によってさまざま。当初は軽い気持ちで飼い始める人も多いかと思いますが、一度飼ったら最後まで見なくてはいけません。ペットも大切な家族、尊い命だからです。とは言え、飼う側が高齢になると、飼うのが難しくなってくるのも事実、どうやって折り合いをつけるかがとても大切です。今回ご紹介する事例は70代のシニア女性と、人間でいえば90歳と高齢である18歳のシニア猫の生活です。単に「かわいい」だけでは済まないシニア同士の暮らし、シニアのペット共生に迫ります。(→「ペット共生型賃貸住宅」とは?|おとなの住む旅 用語解説)
いつの間にか自分以上に高齢になっていた愛猫
70代のA子さん宅には18歳になるスコティッシュホールドのイブリン(メス)がいます。猫の18歳は人間にすると90歳以上。かなりの高齢です。
「飼い始めたきっかけは、娘が高校1年生の時に『猫を飼いたい』と言ったから。それまで猫を飼ったことはありませんでしたが、娘がとても飼いたがっていたのでペットショップへ行きました。そこで最初に見たのがイブちゃん。一目見て娘が『この子がいい!』と。今、娘は34歳。娘からしたら人生の半分以上一緒にいます。イブちゃんとは長い付き合いです」
イブリンちゃんは特に大きな病気もせず元気に暮らしていますが、やはり高齢ということもあり体調を崩しがち。特に冬や季節の変わり目など寒さに弱く、寒いと吐いたり、嗚咽が止まらなくなったりなど常に気を付けないといけない状態です。春夏と温かくなり、大丈夫だろうと思ってエアコンをつけてもすぐに寒がって吐いてしまうそう。いくら可愛くても常に猫のことを考えなくてはいけないのは苦痛だと、A子さんは話します。
「娘は働いているので日中イブちゃんのお世話をするのは私。可愛いことに変わりありませんが、私も体調が悪い時があるのでイブちゃんのことばかり考えていると頭が痛くなるのも事実です。でも、やっぱり大切な家族だから手を抜けません。イブちゃんも高齢だから、いつ何があってもおかしくない。もしもの時を考えると『もっとケアをしてあげればよかった』と後悔だけはしたくないので、イブちゃんが体調を崩さないように室温管理やごはんの用意は徹底しています」
A子さん宅はもう築60年以上の戸建て。外装内装ともにリフォームをしていますが、冬は隙間風が入り、部屋によっては乾燥しがち。寒くならないよう窓には仕切りを立てたり、加湿器を置いて乾燥を防いだりと手を尽くしています。暖房はエアコンと電気カーペットを設置し、イブリンちゃんの寝床には湯たんぽと毛布を常備。やりすぎと思っても、そこまでしないと体調が崩れてしまうので手が抜けない状態です。
A子さんとイブリンちゃんの生活を聞くと、単に“かわいい”だけでは飼えないことが伝わってきます。ペットのほうが人間よりも先に年老いてしまうため、気づけば飼う側がペットを介護する側になる。ペットを飼うにはこの事実をしっかりと認識するのが必須です。次回の後編「シニア猫との付き合い方~シニアのペット共生について考える Vol.2」では、A子さんがペット共生を通じて痛感したことなどをご紹介します。