ペットと暮せる高齢者施設が人気だが「こんなはずじゃなかった」の声も?!施設選びの注意点を専門家が納得解説!

「ペットと一緒に入居できる高齢者施設、ありませんか」

地域包括支援センターなどでは近年、そうした問い合わせが増えているといいます。
しかし、「こんなはずじゃなかった」と入居後に後悔する声があるのも事実です。

そんななか、ペット共生型の施設づくりに詳しい専門家の弓達(ゆだて)隆章氏は、「ペットと暮らせる環境が施設内に本当に整っているか、きちんと確認することが大切」と語っています。

その弓達氏に以下の原稿を寄稿していただきました。

まだまだ少ないペット可の高齢者施設

出典:朝日新聞デジタル 〈調査期間2024年4月4日~5月2日〉

こうしたペットと入居できるタイプの住宅は、介護を必要としない元気な方々が安心して生活できるように配慮されています。
ペット共生型賃貸住宅や老人ホームなどがあります。

実際、 老人ホームや地域包括支援センターなどでは「ペットと入居できる老人ホームを探している」という問い合わせが増加の一途をたどっています。
しかし、ペットと一緒に入居できる老人ホームはまだまだ数が少ないため、空室がない場合も多くあります。

ペットと入居できる老人ホームを探す場合は、以下の点に注意して探す必要があります。
施設選びの際には、「ペット可」であるという理由だけで老人ホームを選ぶことはせずに、ペットと一緒に生活を送れる環境が整っているかをきちんと確認するようにしましょう。

ペット向け設備の状況など3つの注意点

ペットの足洗い場

ペットとの外出を考えている場合は、足の洗い場や施設内のドッグランなど、「ペット向け設備の整備状況を確かめましょう」〈注意点➊〉。
なかにはペット専用シャワーも完備されているところもあります。

また、館内がペットにとって移動しやすい作りになっているか確認することも大切です。

施設探しの際には、「施設内のどこまでペットと一緒に行動できるのか確認しておきましょう」〈注意点➋〉。
ペットの行動範囲をしっかり守ることは、ほかの入居者とのトラブルを防ぐことにもつながります。

もし入居中に飼い主が体調不良になったり入院が必要になったり場合、「施設の介護職員がペットの世話をしてくれるかどうかも確認しておきましょう」〈注意点➌〉。

ペットスペース(ペットの居場所)

また、日帰りや外泊を伴う外出で一時的にペットを預けることができるかどうかも大切なポイントです。
ペットと一緒に暮らせる老人ホームでも、職員がどこまで世話をしてくれるかは施設によって異なります。

もし飼い主である入居者がペットよりも先に亡くなった場合、残されたペットはご家族、保証人に引き取られるのが一般的です。
しかし地方の老人ホームや小規模な施設の場合は、入居者が亡くなった後もペットを引き続き世話してくれることもあります。

ペットが自分よりも長生きした場合、施設側ではどのような対応をしてくれるのか、契約上はどのように定められているのかをしっかり確認しておく必要があります。

現在はこのような問題を一つ一つ丁寧に解決した施設が全国的に増加しています。

ペットと入居できる老人ホームの実例

高齢者のなかには、自分の年齢を考えてペットの飼育を諦めている人も少なくありません。
高齢者がペットと同居することができ、双方の「終のすみか」になることを目指す高齢者施設も最近増えております。

大阪城公園のほど近く、JR玉造駅から歩いて4分の場所に「ペピイ・ハッピープレイスTAMATSUKURI」という施設があります。
ここは「ペット共生型有料老人ホーム」をうたい、9階建ての施設には4月時点で、20組21人の入居者が計26匹の犬猫とともに暮らしています。

入居者の大道欣孝さん(81)は、2歳のボストンテリア、ローラとともに昨年5月、夫婦で入居しました。
もともと夫婦そろって大の犬好きだったのですが、年齢を考え、先代の犬が死んで10年ほどは、犬のいない生活を送っていました。
「寂しい、どこか物足りない暮らしだった」と振り返ります。

一昨年、新聞の折り込み広告でこの施設の存在を知ったのでした。ペットと同居でき、しかも獣医師や愛玩動物看護らが飼育のサポートをしてくれるという。
「こういう施設があるのか。それならまた、犬を飼えるかもしれない」。

すぐに行動に移しました。ペット同伴で入れるほかの老人施設もいくつか見学しましたが、そのなかでもペピイは、ペットのためのサービスや施設が充実していることが分かりました。まさに清水の舞台から飛び降りる思いで入居を決断し、ローラを迎えたのでした。

今は愛犬と楽しく暮らせる施設で毎日が充実しています。ローラは屋上のドッグランやプレイルームで他のワンちゃんたちと遊ぶのが大好き。飼い主の大原さんも、ローラと一緒に自然と身体を動かしている毎日です。

⇒ 弓達氏の関連記事「ペット同伴避難 台湾沖地震での場合【ペット防災について #3】」

ペット共生文化の情報を発信

【筆者略歴】弓達 隆章(ゆだて たかあき)
㈱アドバンスネット ペット共生型賃貸管理業エグゼクティブアドバイザー。愛媛県出身、法大院卒(経営管理修士)。
34年間の損害保険会社勤務を経て、2018年「共生社会におけるペット保険の現状と将来」を慶大保険学会で発表。日本と海外におけるペット共生文化の相違、今後の展望をまとめる。
その後、大手賃貸管理会社にて保証ビジネス担当。
22年よりイチイグループにてエグゼクティブアドバイザー兼ライター。ペット共生型賃貸不動産オーナーのための経営情報、シニア向けペット共生のすすめ、自治体と協調したペット防災等の情報発信中。
防火防災管理士、賃貸不動産経営管理士。なおペットはずっとマルチーズ派。

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