高齢者の入居拒否の解決策として急浮上する「死後事務委任契約」!しかし入居者の死後の支援は誰ができるの?

「一人暮らしの高齢者が賃貸住宅の入居を断られる」という問題への懸念は古くからありますが、このところ不動産賃貸業界や国土交通省では「高齢者の入居をどう進めるか」というテーマをめぐり議論が活発になってきました。

どんな解決策があるのでしょうか。

残置物処理など、賃貸住宅管理会社への期待高まる

その解決策の一つとして検討されているのが「建物賃貸借契約と死後事務委任契約をセットにする契約方式」です。

入居者が亡くなると、部屋の賃借権と残された家財等(残置物)の所有権は相続人に引き継がれますが、相続人が誰でどこにいるのかが分からない場合もあります。

そんなときは、賃貸借契約の解除や残置物の処理などができなくなってしまうことが問題です。
これを解決しなければ、次の入居者を募集することもできません。

このあたりの問題が、高齢者が入居を拒否される大きな要因でした。

賃貸住宅管理会社が受任者へ

前述の死後事務委任契約は、入居者が亡くなった後のこうした手続きを事前に決めておいた人(受任者)が本人に代わって行うというものです。

この契約で定めておく「受任者」は、誰がふさわしいのでしょうか。
まず、賃貸借契約の一方の当事者である「貸主」は借主と利害が反するため、契約解除等のできる受任者にはなり得ないとされています。

そこで今、適切な受任者として有力視されているのが「賃貸住宅管理会社」です。
管理会社が受任者となる場合、次のメリットがある一方で、懸念される事項も
あります。

空室期間が減らせる

【賃貸管理会社が受任者になるメリット】

1 入居者が亡くなったとき、迅速に賃貸借契約を解除し、残置物を適切に処理することが可能です。これにより、オーナーは空室の期間や残置物の処理費用などを最小限に抑えることができます。

2 入居者は自分の希望通りに「相続人等に渡す家財等」を指定し、その送付先を伝えておくことなどができるため、自らの意思が尊重されます。

3 入居者から委任された内容を管理会社が誠実に実行することで、入居者とオーナー双方の利益が守られます。

限られる受任者権限

【賃貸管理会社が受任者になる懸念事項】

Ⅰ 受任者(管理会社)は入居者から委任されたこと以外はできません。たとえば相続人や債権者等と交渉する、裁判所に申し立てをするなどは権限外です。

Ⅱ 受任者(管理会社)は入居者から委任されたことを行うとき、一定の注意義務を負います。これを守らなかった場合、入居者や相続人等に対して損害賠償責任を負うかもしれません。

Ⅲ 管理会社が変わったり、廃業や倒産をした場合、受任者は誰が引き継ぐのかが課題です。

⇒【総集編 老後の住まいの選び方】第2章「生活費20万で入れる施設はあるの?」

事故の早期発見対策

このような死後事務委任契約と合わせて、入居中の対策も欠かせません。
火災や孤独死などの早期発見のためには、見守りサービスや防災設備の導入が効果的です。

また、認知症などへの対処については、管理会社が地域包括支援センターや社会福祉協議会等の専門機関と連携すれば、入居者の「安心・安全」をサポートできます。

以上見てきましたように、高齢者の入居が敬遠される原因を払拭するためには、入居者に対するリスク管理やサービス提供などが何よりも有効であると思われます。

それならば、賃貸住宅管理会社としてはオーナーが高齢の入居者を安心して受け入れられるよう、さまざまな仕組みと実務ノウハウを積み上げていく必要があるのではないでしょうか。

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