存在感増す「自立型サ高住」、ひとり暮らしの不安を解消、『年老いた親を自宅近くに呼び寄せたい』子の想いの受け皿に
高齢の単身・夫婦世帯が安心して居住できる賃貸住宅として、行政が法に基づき認定している「サービス付き高齢者向け住宅」(略称:サ高住)。制度創設からわずか5年で、全国に約6千棟・21万戸が供給されました。
なかでも最近は『自立型』と呼ばれるサ高住の新設が続いており、その存在感が次第に増してきています。対象となる入居者層は身の回りのことがご自身で可能な、自立して生活のできる(要介護度は軽い)人たちが中心です。
この自立型サ高住を選択しているユーザーとは、どのような人たちなのでしょうか。本誌取材班が実際に入居した方々に聞いてみました。(→「呼び寄せ」とは?|おとなの住む旅 用語解説)
『誰かとつながっていたい』日本人の意識を変えた大震災
先月(2017年4月1日現在)、東日本大震災から6年の月日が経ちました。
あれから日本人の意識は、大きく変わったのではないかと言われています。
「人と人のきずな」とは、「安心・安全な住まい」とは。いろいろなことを考えずにはいられません。
高齢期の住まいとしてサ高住が選ばれるようになったのも、そうした意識の変化が背景にあると思われます。
都内の女性入居者(86歳)がこう話してくださいました。
『ひとり暮らしをしていた私がサ高住に転居したのは、安心できる住まいだからです。
ここなら、住み込みの管理人さんが夜でも駆けつけてくれます。
震災が起きてからは、誰かとつながっていたいと強く思うようになりました』
サ高住の入居者1900名へのアンケート調査(厚労省・平成26年)によると、「入居を決めた理由」は「ひとり暮らしが不安になったため」がトップ(77%)を占め、「介護が必要だから」を上回ったのです。
『父さんのこれからが心配だ』サ高住に呼び寄せる息子の想い
以前はあまり聞かれなかった『呼び寄せ高齢者』という言葉が、最近は辞書にも載るようになりました。これは「子など家族の居住地に呼び寄せられ、移り住んだ高齢者」を意味しています。
サ高住に転居した70代のご夫婦が、入居の経緯についてこう話してくださいました。
『東京で暮らす息子夫婦が、こう言ってきたことがキッカケでした。「お父さんたちは今は元気だけど、これからのことが心配だ。僕らの家の近くに引っ越してきてほしい」。けっこう迷ったのですが、地方から出てくることに決めました』
自立型サ高住はこうしたニーズを持つ人たちにとって、数少ない受け皿になっています。いま都内の自立型サ高住では、この「呼び寄せ派」が新規入居者の4~5割にも及んでいるのが実態、という声も聞かれるほどです。
このように自立型サ高住では「介護サービス」だけが求められているのではなく、入居の動機も多岐にわたっています。自立型に多くみられるのが『食事の提供があるから』『自宅の管理が大変になったため』『セキュリティー面の安心から(災害・防犯等)』などが主な理由なのです(厚労省調査25年)。
サービス付き高齢者向け住宅とは
厚生労働省が所管する「高齢者住まい法」の改正により平成23年10月に創立された、「高齢者単身」「夫婦世帯」が安心して居住できる賃貸等の住宅。
サービスとは、「安否確認サービス」「生活相談サービス」のことを指す。
入居対象は「60歳以上」「要介護または要支援」の認定を受けている60歳未満の方。