
定年退職後は、都会の自宅で暮らしながら、自然豊かな地方にも生活拠点を持ちたい。
そんな二拠点生活(二地域居住)に憧れる方もいるのではないでしょうか。
しかし、年金を主な収入源とする場合、「2つの住まいを維持する余裕はあるのか」「毎月どれくらいの生活費が必要なのか」といった不安もあるでしょう。
実際、二拠点生活に必要な費用は、現在の住まいが持ち家なのか賃貸なのか、二拠点目にどれくらい滞在するのかによって大きく変わります。
この記事では、年金だけで二拠点生活を実現できるのかを考えながら、持ち家・賃貸・一人暮らしの3つのケースで家計をシミュレーションします。
費用を抑える方法や、老後の資金計画で注意したいポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
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年金だけで二拠点生活はできる?

結論からいうと、年金収入だけでも二拠点生活を実現できる可能性はあります。
ただし、すべての年金生活者が無理なく実現できるわけではありません。
二拠点生活では、現在の生活費に加えて、もう一つの住まいを維持する費用や交通費などが発生します。
そのため、年金の受給額だけで判断するのではなく、毎月の生活費や貯蓄、住宅の所有状況などを総合的に考える必要があります。
年金収入と生活費のバランスが重要
年金だけで二拠点生活を続けられるかどうかは、毎月の年金収入から生活費を差し引いた金額によって変わります。
例えば、年金の手取り収入が月25万円、現在の生活費が月18万円の世帯であれば、単純計算で毎月7万円の余裕があります。
一方、生活費が月24万円かかっている場合は、残る金額が1万円となるため、二拠点目を維持することは難しくなるでしょう。
また、公的年金の受給額は、国民年金や厚生年金への加入状況、保険料の納付期間などによって異なります。
二拠点生活を検討する際は、まず年金の手取り収入と現在の生活費を確認し、無理なく使える予算を把握することが大切です。
持ち家と賃貸では実現のしやすさが異なる
現在の住まいが持ち家なのか賃貸なのかによっても、二拠点生活の費用は大きく変わります。
住宅ローンを完済した持ち家であれば、毎月の家賃が発生しないため、二拠点目の住居費に予算を回しやすくなります。
ただし、持ち家にも固定資産税や火災保険料、修繕費などが必要です。マンションの場合は、管理費や修繕積立金なども考慮しなければなりません。
一方、現在の住まいが賃貸住宅の場合は、2つの住居の家賃を支払う必要があります。
どちらが経済的に有利かは、住宅の維持費や家賃、滞在頻度などによって異なるため、実際の支出を比較することが重要です。
年金生活で二拠点生活をするには毎月いくら必要?

二拠点生活に必要な金額を考える前に、まずは一般的な高齢者世帯の生活費を確認しておきましょう。
総務省統計局の「家計調査(2025年平均)」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、1か月の可処分所得が22万1,544円、消費支出が26万3,979円となっています。
つまり、平均では毎月約4万2,000円の不足が生じている計算です。
また、65歳以上の単身無職世帯でも、可処分所得が約11万8,000円、消費支出が約14万8,000円となっており、約3万円の不足が生じています。
| 項目 | 高齢夫婦無職世帯 | 高齢単身無職世帯 |
| 可処分所得(月額) | 約22.2万円 | 約11.8万円 |
| 消費支出(月額) | 約26.4万円 | 約14.8万円 |
| 毎月の不足額 | 約4.2万円 | 約3.0万円 |
※総務省「家計調査」2025年平均。可処分所得には公的年金以外の収入が含まれる場合もあります。また、平均値は個々の世帯の家計状況を示すものではありません。
このように、一般的な高齢者世帯でも収入を支出が上回る傾向があるため、二拠点生活を始める際には慎重な資金計画が必要です。
二拠点生活で増える費用の内訳
二拠点生活で増える支出は、二拠点目の家賃だけではありません。
新たに必要となる主な費用を整理すると、以下のようになります。
| 費用項目 | 内容 |
| 住居費 | 家賃、管理費、固定資産税など |
| 光熱費 | 電気・ガス・水道料金 |
| 通信費 | インターネット回線など |
| 交通費 | 新幹線、高速道路、ガソリン代など |
| 住宅管理費 | 清掃、庭の手入れ、設備の修繕など |
| 初期費用 | 敷金・礼金、家具・家電の購入費など |
ただし、食費や日用品費などは、2つの住居があるからといって単純に2倍になるわけではありません。
例えば、地方に滞在している期間は都市部での食費が減るため、食費全体の増加をある程度抑えられる可能性があります。
一方、都市部と地方を頻繁に往復する場合は、交通費が大きな負担になることもあります。
そのため、二拠点生活の予算を考える際は、家賃だけでなく、年間の移動費や維持管理費も含めて計算することが重要です。
持ち家の夫婦が二拠点生活をする場合
まずは、住宅ローンを完済した持ち家に住む夫婦が、地方で月額4万円の賃貸住宅を借りるケースを考えてみましょう。
今回は、夫婦の年金手取り収入を月30万円、現在の生活費を月20万円と仮定します。
| 項目 | 月額 |
| 年金の手取り収入 | 300,000円 |
| 現在の生活費 | 200,000円 |
| 二拠点目の家賃 | 40,000円 |
| 二拠点目の光熱費・通信費 | 10,000円 |
| 交通費 | 20,000円 |
| その他の維持費 | 5,000円 |
| 支出合計 | 275,000円 |
| 毎月の収支 | +25,000円 |
※実際の平均年金額や地域の家賃相場を示すものではなく、条件を設定したモデルケースです。現在の生活費には、持ち家の税金や通常の維持費を含むものとします。
このケースでは、二拠点目を維持しても毎月2万5,000円の黒字となります。
ただし、住宅の大規模修繕や医療費など、突発的な支出が発生する可能性もあります。
また、年金手取り収入が月30万円ある世帯を想定しているため、すべての年金生活者に当てはまるわけではありません。
持ち家がある場合でも、毎月の収支に十分な余裕があるか確認することが大切です。
賃貸住宅に住む夫婦が二拠点生活をする場合
続いて、現在の住まいが賃貸住宅である夫婦のケースを考えてみましょう。
夫婦の年金手取り収入を月25万円、現在の家賃を含めた生活費を月20万円と仮定します。
| 項目 | 月額 |
| 年金の手取り収入 | 250,000円 |
| 現在の生活費(家賃を含む) | 200,000円 |
| 二拠点目の家賃 | 40,000円 |
| 二拠点目の光熱費・通信費 | 10,000円 |
| 交通費 | 20,000円 |
| その他の維持費 | 5,000円 |
| 支出合計 | 275,000円 |
| 毎月の収支 | -25,000円 |
※金額は仮定に基づくモデルケースです。
このケースでは、毎月2万5,000円、年間では30万円の不足が生じます。
不足分を貯蓄から補う場合、10年間で300万円を取り崩す計算です。さらに、物価上昇や医療費の増加なども考慮する必要があります。
賃貸住宅に住んでいる場合は、現在の家賃に加えて二拠点目の家賃も発生するため、固定費が大きくなりやすい点に注意しましょう。
二拠点目の滞在日数が少ないのであれば、毎月家賃を支払うよりも、必要な期間だけ宿泊施設を利用する方が経済的な場合もあります。
一人暮らしで二拠点生活をする場合
一人暮らしの場合は、夫婦世帯と比べて住居費を分担できないため、より慎重な資金計画が必要です。
例えば、年金の手取り収入が月15万円、現在の生活費が月12万円の方が、地方に二拠点目を設けるケースを考えてみましょう。
| 項目 | 月額 |
| 年金の手取り収入 | 150,000円 |
| 現在の生活費 | 120,000円 |
| 二拠点目の家賃 | 30,000円 |
| 二拠点目の光熱費・通信費 | 8,000円 |
| 交通費 | 15,000円 |
| その他の維持費 | 3,000円 |
| 支出合計 | 176,000円 |
| 毎月の収支 | -26,000円 |
※金額は仮定に基づくモデルケースです。
この場合、毎月2万6,000円の赤字となるため、年金収入だけで二拠点生活を続けることは難しいと考えられます。
一方、二拠点目を常時借りるのではなく、年に数回の短期滞在に変更すれば、年間の支出を抑えられる可能性があります。
一人暮らしで二拠点生活を検討する際は、家賃の安さだけでなく、移動のしやすさや医療機関へのアクセスなども重視しましょう。
年金暮らしで二拠点生活の費用を抑える方法

年金収入だけで二拠点生活を実現するためには、毎月の固定費をできるだけ抑えることが重要です。
特に、住居費と交通費は工夫次第で支出を調整しやすい項目です。
家賃の安い地域や小さな住まいを選ぶ
二拠点目の家賃を抑えることは、長期的な生活費の節約につながります。
例えば、家賃6万円の物件から4万円の物件に変更すれば、毎月2万円、年間では24万円の節約になります。
地方では都市部よりも家賃が安い物件を探せる地域がありますが、家賃だけで住まいを選ぶことはおすすめできません。
駅から遠い住宅や公共交通機関が少ない地域では、車の購入費や維持費が必要になる可能性があります。
また、築年数が古い住宅では、断熱性能や設備の状態によって光熱費が高くなる場合もあります。
そのため、家賃・交通費・光熱費を合計した生活費で比較することが大切です。
短期滞在やお試し住宅を活用する
二拠点生活を始める際は、最初から賃貸住宅を契約するのではなく、短期滞在から始める方法もあります。
例えば、地方に滞在する期間が年間30日程度であれば、ホテルや民泊、マンスリーマンションなどを利用する選択肢があります。
仮に、二拠点目の家賃が月4万円の場合、年間の家賃は48万円です。
一方、1泊8,000円の宿泊施設を年間30泊利用した場合、宿泊費は24万円となります。
| 滞在方法 | 年間費用の例 |
| 家賃4万円の賃貸住宅 | 480,000円 |
| 1泊8,000円で年間30泊 | 240,000円 |
| 差額 | 240,000円 |
※比較は家賃と宿泊料金のみです。賃貸住宅の初期費用や光熱費、宿泊施設の繁忙期料金などは含まれていません。
この条件では、短期滞在の方が年間24万円安くなります。
ただし、年間の滞在日数が増える場合は、賃貸住宅を契約する方が経済的になる可能性もあります。
また、自治体によっては、移住希望者向けのお試し住宅を提供している場合があります。気になる地域がある方は、自治体の公式サイトなどで利用条件を確認してみましょう。
移動回数を減らして交通費を節約する
二拠点生活では、住居費だけでなく、2つの地域を往復する交通費も大きな支出となります。
例えば、1回の往復交通費が1万5,000円の場合、月に2回往復すると年間36万円が必要です。
一方、月に1回の往復に減らせば、年間18万円となり、18万円の節約につながります。
| 往復回数 | 年間交通費 |
| 月2回 | 360,000円 |
| 月1回 | 180,000円 |
| 2か月に1回 | 90,000円 |
※1回の往復交通費を1万5,000円と仮定した試算です。
このように、1回の滞在期間を長くして移動回数を減らすことで、交通費を抑えられます。
また、移動による体力的な負担を軽減できる点も、シニア世代にとってはメリットです。
ただし、長期滞在する場合は、留守にする自宅の防犯対策や郵便物の管理などにも注意しましょう。
年金で二拠点生活を始める前に確認したいこと

年金収入だけで二拠点生活を続けるためには、毎月の収支だけでなく、将来的な支出についても考えておく必要があります。
特にシニア世代では、医療費や介護費用、住宅の修繕費など、予想外の出費が発生する可能性があります。
医療費や介護費用を確保しておく
年金生活で二拠点生活を始める場合は、医療費や介護費用に備える資金を確保しておきましょう。
現在は健康であっても、将来的に通院回数が増えたり、介護サービスが必要になったりする可能性があります。
また、二拠点生活では、滞在先によって医療機関へのアクセスが異なります。遠方の病院まで通院する必要がある場合は、交通費も増えることになります。
医療費や介護費用は個人差が大きいため、一律の金額を準備すれば十分というわけではありません。
持病の有無や家族構成、利用できる公的制度などを確認し、生活費とは別に予備資金を確保しておくことが大切です。
住宅の修繕費や突発的な支出に備える
二拠点生活では、2つの住宅を維持するため、設備の故障や修繕などによる支出が発生する可能性があります。
特に持ち家の場合は、屋根や外壁の修繕、給湯器の交換など、まとまった費用が必要になることもあります。
また、地方で車を利用する場合は、車検や自動車保険、故障時の修理費なども考慮しなければなりません。
こうした支出は毎月発生するわけではありませんが、長期的には家計に大きな影響を与える可能性があります。
二拠点生活を始める前に、住宅や車の維持費を年間単位で見積もり、毎月少しずつ積み立てておくとよいでしょう。
年金収入だけで難しい場合は暮らし方を見直す
家計をシミュレーションした結果、年金収入だけでは二拠点生活を維持できない場合もあるでしょう。
しかし、必ずしも二拠点生活を諦める必要はありません。
例えば、毎月二拠点目の家賃を支払うのではなく、年に数回だけ地方に滞在する方法もあります。
また、移動回数を減らしたり、現在の住まいから近い地域を選んだりすることで、交通費を抑えることも可能です。
年金収入に余裕がない場合は、貯蓄を大きく取り崩してまで二拠点生活を続けるのではなく、無理のない滞在スタイルを検討することが重要です。
まとめ|年金だけで二拠点生活をするなら家計の見直しから

年金だけで二拠点生活(二地域居住)を実現できるかどうかは、年金の受給額や現在の生活費、二拠点目の住居費などによって異なります。
住宅ローンを完済した持ち家がある場合でも、光熱費や交通費、住宅の修繕費などを含めた資金計画が必要です。
また、現在の住まいが賃貸住宅の場合は、2つの住居の家賃が発生するため、固定費が大きくなりやすい点に注意しましょう。
費用を抑えたい場合は、家賃の安い地域を選ぶほか、短期滞在やお試し住宅を利用する方法もあります。
特にシニア世代では、現在の生活だけでなく、将来的な医療費や介護費用にも備えておくことが大切です。
まずは毎月の年金収入と生活費を確認し、二拠点生活に使える予算を計算することから始めてみてはいかがでしょうか。
無理のない資金計画を立てることが、年金暮らしでも二拠点生活を長く楽しむための第一歩となります。
本文中の公的統計と年金額については、以下の資料を参照しています。
家計シミュレーションの金額は、統計上の平均値ではなく、記事用に設定した仮定のモデルケースです。
-総務省統計局「家計調査報告 2025年平均結果の概要」
-日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」
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