
台風や集中豪雨などによって河川が増水したとき、高齢者は若い世代よりも早めに避難を始めることが重要です。
「まだ雨はそれほど強くないから大丈夫」「川から離れているから問題ない」と考えているうちに状況が悪化し、避難が難しくなってしまう可能性があります。
特に歩行に不安がある方や、杖・車いすを使用している方は、雨風が強くなってからの移動には大きな危険が伴います。
では、高齢者は洪水の危険があるとき、どのタイミングで避難すればよいのでしょうか。
この記事では、高齢者が洪水時に逃げ遅れないために知っておきたい避難のタイミングや避難先、ハザードマップの確認方法、平常時に準備しておきたいことなどを紹介します。
離れて暮らす高齢の親がいる方も、この機会に家族で洪水への備えを確認してみましょう。
防災対策というと、水や非常食、懐中電灯などをイメージする方も多いかもしれません。 しかし、高齢者の場合はそれだけでは不十分な場合があります。 持病の薬、補聴器、入れ歯、夜間の移動、エレベーター停止など、シニア世代ならではの課題があるためです。 また、一人暮らしの高齢者世帯も増え...
洪水では高齢者の「早めの避難」が重要

洪水が予想されるとき、高齢者にとって重要なのは「危険になったら避難する」のではなく、「危険になる前に避難する」という考え方です。
河川の増水や道路の冠水が始まってからでは、避難そのものが難しくなる可能性があります。
高齢者は避難に時間がかかることを前提にする
年齢を重ねると、若い頃と比べて歩行速度が低下したり、階段や坂道を移動するのに時間がかかったりすることがあります。
普段は問題なく歩ける方でも、大雨のなかでは状況が大きく変わります。
道路が濡れて滑りやすくなるだけでなく、強風によってバランスを崩したり、暗くなって足元が見えにくくなったりするためです。
杖や歩行器、車いすを使用している場合は、さらに移動が難しくなる可能性があります。
避難場所まで普段なら10分程度で到着できるからといって、災害時にも10分で移動できるとは限りません。
そのため、高齢者の洪水対策では「避難に時間がかかる」ことを前提として計画を立てる必要があります。
「まだ大丈夫」という判断が逃げ遅れにつながることも
長年同じ地域で生活していると、「この川は今まで氾濫したことがない」「前の台風でも避難しなくて大丈夫だった」「ここまで水が来ることはないだろう」
と考えてしまうことがあります。
しかし、過去に被害がなかったからといって、今回も安全とは限りません。
短時間に大量の雨が降る線状降水帯などによって、河川の水位や周辺の状況が急激に変化する可能性もあります。
過去の経験だけで判断せず、気象情報や河川情報、自治体から発令される避難情報などを確認して行動することが重要です。
高齢者はいつ避難する?「警戒レベル3」が重要

「まだ避難指示が出ていないから、自宅にいても大丈夫」と考えている方もいるかもしれません。
しかし、高齢者など避難に時間を要する方は、避難指示よりも前の段階から行動を始めることが基本です。
「高齢者等避難」が出たら避難を開始
大雨や洪水などの危険が高まった際に重要となるのが、市町村から発令される「警戒レベル3 高齢者等避難」です。
これは文字通り、高齢者や障害のある方など、避難に時間がかかる人に早めの避難を促す情報です。
危険な場所にいる高齢者などは、警戒レベル3の段階で避難することが求められます。
一方、「警戒レベル4 避難指示」は危険な場所にいる人が全員避難する段階です。
高齢者が警戒レベル4になるまで待っていると、雨風が強くなったり、道路が冠水したりして、安全な避難が難しくなる可能性があります。
「まだ周囲の人が避難していないから」と考えるのではなく、自分自身が避難に時間を要するのであれば早めに行動しましょう。
避難情報が出る前でも危険を感じたら行動する
「高齢者等避難が出るまで、絶対に自宅にいなければならない」という意味ではありません。
台風の進路や大雨の予報などから危険が予想される場合は、避難情報が発令される前に安全な場所へ移動することも選択肢になります。
特に高齢者の場合、夜間や激しい雨のなかで避難するよりも、明るいうちや雨風が強くなる前に移動したほうが安全なケースがあります。
たとえば、大型台風が翌日に接近すると予想されているのであれば、前日のうちに安全な場所にある家族や親族の家へ移動しておく方法も考えられます。
「いつ避難情報が出るか」だけを見るのではなく、「自分が安全に移動できる時間はいつまでか」という視点で考えることが大切です。
洪水時はどこへ逃げる?高齢者が考えておきたい避難先

洪水時の避難というと、学校や公民館などの避難場所を思い浮かべる方が多いでしょう。
しかし、避難とは必ずしも指定された施設へ行くことだけを意味するものではありません。
自宅周辺の危険性や身体の状態などを踏まえて、複数の避難先を考えておきましょう。
指定緊急避難場所だけが選択肢ではない
災害の危険から命を守るために緊急的に避難する場所として、市町村では「指定緊急避難場所」が指定されています。
ただし、避難先はそこだけとは限りません。
浸水の危険がない場所に住んでいる親族や知人の家、安全な地域にある宿泊施設などへ早めに移動することも考えられます。
高齢者の場合は、「避難場所まで行けるか」という点も重要です。
避難場所までの道に急な坂や階段がある、距離が遠いといった場合には、身体状況によって移動が難しい可能性があります。
平常時に実際の避難経路を歩いてみて、どの程度の時間がかかるのか、危険な場所はないかを確認しておくとよいでしょう。
外へ出るほうが危険なら「垂直避難」も検討
避難が遅れてしまい、すでに道路が冠水している場合などは、無理に外へ出ることでかえって危険になる可能性があります。
そのような状況では、建物の上階など、より高い場所へ移動して安全を確保する「垂直避難」が選択肢になることがあります。
ただし、「洪水なら自宅の2階にいれば必ず安全」というわけではありません。
想定される浸水の深さや建物の構造、河川との位置関係などによって危険性は異なります。
また、平屋住宅では垂直避難そのものが難しい場合があります。
自宅にとどまることが可能なのか、あらかじめハザードマップなどを使って確認しておくことが重要です。
すでに水が流れ込んでいる道路やアンダーパスなどを歩いて避難するのは非常に危険です。
状況が悪化する前に避難を完了することが、高齢者にとって最も重要な洪水対策の一つといえます。
高齢者が洪水に備えて準備しておきたいこと

洪水対策は、台風が接近してから始めるものではありません。
普段から自宅周辺の危険性や避難先を確認し、必要なものを準備しておくことで、いざというときに行動しやすくなります。
ハザードマップで「自宅が何m浸水する可能性があるか」を確認
まず確認しておきたいのが、住んでいる地域のハザードマップです。
ハザードマップでは、河川が氾濫した場合に浸水が想定される区域や浸水深などを確認できます。
重要なのは、単に「自宅が色の付いたエリアに入っているか」を見るだけではありません。
「自宅ではどの程度の浸水が想定されているのか」「近くを流れる河川が氾濫した場合はどうなるのか」「避難場所までの経路に浸水リスクはないか」
などを確認します。
マンションなどの集合住宅に住んでいる場合も、建物の上階だから問題ないと決めつけるのではなく、周辺が浸水して孤立する可能性なども考えておく必要があります。
薬・お薬手帳・眼鏡など「高齢者ならでは」の持ち出し品を準備
高齢者の非常用持ち出し袋では、水や食料、懐中電灯など一般的な防災用品だけでなく、普段の生活に欠かせないものを準備しておくことが重要です。
特に忘れたくないのが、普段服用している薬です。
避難が長引く可能性も考え、お薬手帳や処方内容が分かるものも持ち出せるようにしておきましょう。
そのほか、眼鏡、補聴器や予備の電池、入れ歯と洗浄用品、杖、衛生用品など、自分の生活に必要なものを確認します。
スマートフォンを利用している場合は、モバイルバッテリーや充電ケーブルも用意しておくと安心です。
ただし、荷物を詰め込みすぎて重くすると、高齢者にとって避難そのものが負担になってしまいます。
「命を守るために必要なもの」を優先し、自分で無理なく持てる重さにしておくこともポイントです。
家族や近所の人と「誰が避難を手伝うか」を決めておく
一人暮らしの高齢者や歩行に不安がある方の場合、本人だけで避難計画を立てるのではなく、周囲の人と情報を共有しておくことも重要です。
たとえば、「警戒レベル3になったら娘に電話する」「避難するときは近所の家族と一緒に移動する」「自分で避難できない場合は誰に連絡する」
など、できるだけ具体的に決めておきます。
スマートフォンを持っていても、災害時に慌てて操作できない可能性があります。
家族や頼れる人の電話番号を紙に書いて非常用持ち出し袋に入れておくなど、デジタル機器だけに頼らない方法も準備しておくとよいでしょう。
また、高齢者や障害のある方など、自力での避難が難しい人については、市町村が「避難行動要支援者名簿」を作成しています。
支援制度や具体的な運用方法は自治体によって異なるため、避難に不安がある方は住んでいる市区町村の窓口などで確認しておきましょう。
洪水から高齢者を守るために家族ができること

高齢者本人だけでなく、家族も洪水への備えに関わることが大切です。
特に離れて暮らしている高齢の親がいる場合は、「大雨になったら電話をする」だけではなく、平常時から避難方法を一緒に考えておきましょう。
まず確認したいのが、実家周辺のハザードマップです。
親と一緒に、「自宅にはどの程度の浸水リスクがあるのか」「どこへ避難するのか」「どうやって移動するのか」「避難場所まで何分かかるのか」「一人で避難できない場合は誰に頼るのか」
を確認しておきます。
そして重要なのが、避難を始めるタイミングを具体的に決めることです。
「危なくなったら逃げてね」では、どの段階が「危ない」のか判断が分かれてしまいます。
「高齢者等避難が出たら○○へ移動する」「大型台風が接近するときは前日から家族の家に泊まる」など、具体的な行動まで決めておくと実践しやすくなります。
また、高齢者のなかには「家族に迷惑をかけたくない」「避難所へ行くほどではない」と遠慮してしまう方もいます。
だからこそ、災害が迫ってから説得するのではなく、平常時に家族で話し合っておくことが大切です。
まとめ|高齢者の洪水対策は「早めの避難」を意識

洪水から身を守るうえで、高齢者にとって特に重要なのが早めの避難です。
歩行速度の低下や身体状況などによって移動に時間がかかる場合、雨風や浸水が激しくなってからでは安全に避難できない可能性があります。
危険な場所にいる高齢者などは、市町村から「警戒レベル3 高齢者等避難」が発令された段階で避難を開始することが基本です。
ただし、必ず警戒レベル3まで待つ必要があるわけではありません。台風や大雨によって危険が予想されるのであれば、明るいうちや天候が悪化する前に安全な場所へ移動することも検討しましょう。
そして、洪水が起きてから避難先を考えるのではなく、平常時にハザードマップを確認しておくことが重要です。
「どこへ逃げるのか」だけではなく、「いつ」「どの道で」「どうやって」「誰と避難するのか」まで具体的に決めておくと、いざというときに行動しやすくなります。
離れて暮らす高齢の親がいる方も、台風や大雨が迫ってから連絡するだけでなく、実家周辺の洪水リスクや避難方法について一度一緒に確認してみてはいかがでしょうか。
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